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「や……辞める??!!」

「はい」



社長に退職届を提出した。私の意志は、変わらない。

退職届を持つ社長は目を丸くして驚いた表情を見せた。



「……理由を聞こうか」

「……本当は二足の草鞋で仕事を続けていきたかったんです。ですが、どうしてもやりたいことが見つかってしまいました」

「今の、ライターの仕事か?」

「はい」

「……」



社長は眉間にしわを寄せた。



「時短でも、雇用形態を変えてもらってもいいんだぞ?俺としては、紅谷さんに残ってもらいたいんだが」

「……申し訳ありません」

「……考えは変わらないようだな」



社長は大きくため息をついた。



「いや、いつかこうなるとは思っていたんだ。だが、俺としても何か手伝えることはないかと思っていたんだ。協力できることは協力していきたい。だが、紅谷さんが両方を両立することが難しいと判断したということは……これから忙しくなるんだな」

「はい。それに、もっともっとやらなければならないことを見つけてしまいました」

「……そうか」

「申し訳ありません……」

「まあいいじゃない、あんた。敦子ちゃんがこんだけ行ってるんだから」



幸路さんが社長の方を強く叩いた。



「頑張んなさいよ!ちょっとでも無理だと思ったら、気兼ねなく戻ってらっしゃい!」

「……はいっ!ありがとうございます!」



すると、応接室の扉が空き、朱志香ちゃんと佐藤さんが入ってきた。



「ねえさああああん!」



朱志香ちゃんが私の身体に体を寄せる。



「辞めないでください……どうすれば…いいんですかっ…」

「朱志香ちゃん……」



つられて涙が出そうになり、必死にこらえる。



「紅谷さん……」

「佐藤さん、今までありがとうございました。面接のときからお世話になって、感謝してます」

「そ……そんな……こと」



佐藤さんは顔を手で覆い、涙を必死に隠していた。


今、まだ学校に行っている樹里ちゃんにもお別れの挨拶をしなきゃいけない。



「樹里も悲しむかな…」

「あんたがそんなしけた顔してどうするの!」



幸路さんが社長の背中を叩く。



「敦子ちゃん、本当にありがとうね!また戻ってきなよ!」

「ううっ……姉さんの為なら…」

「ぐすっ…」

「……」



とてもお世話になった人たち…家族。私は、なんて幸せだったんだろう。

そんな人たちの奇跡を、私はしっかりと残しておきたい。



「あの…最後に、私のわがままを聞いてもらってもいいですか?」

「……わがまま?」




私は社長が机に置いた退職届の横に、一枚の紙を出した。







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