五、アツ子の題
1
突如として光る私のスマートフォンの画面。
そして、鳴りやまない着信音。
ベッドに入ったのは深夜一時。コラムの記事をメールで転送して寝床に就こうとしたまさにその時、スマートフォンが故障したかとばかりに鳴りやまなくなった。
何が起きたのかと恐怖を覚え、咄嗟にスマートフォンの画面を覗くと
「○○さんにリツイート」「○○さんにいいね」
「○○さんにリツイート」「○○さんにいいね」
「○○さんにリツイート」「○○さんにいいね」
紅谷敦子:三十一歳。
ペンネーム及びアカウント名:アツ子
職業:ライター、OL
そんなアツ子のアカウントが、バズっていた。
「どうしたのその目の下のクマ?!」
「寝不足か?肌に悪いぞ」
「うん…昨日スマートフォンが鳴りやまなくて」
「スマートフォン?」
日曜の朝。私の目は日差しという攻撃により激しく、そして痛く染みていた。あの後夜中の三時までスマートフォンが鳴りやむことがなく、睡眠妨害を食らった。
三十一歳にして、初めての経験。だけど、バズってしまうほどのことに思い当たることが全くない。
強いて言えば、自身のツイートを固定してライターとしての活動を報告していたツイートがバズっていたということだけ。
何が起きたのか、よくわからない。
思考も…働かない。
「眠い」
「アツ、口からオニオンが垂れてるぞ」
「…ムシャ」
「とりあえずご飯食べたら一回寝てきたら?あとは私やっておくから」
「ありがとう…助かる。とりあえず一時間ぐらい寝てくる」
「うん。ぐっすり寝てきなさい」
大好きなオニオンスライスサラダ。せっかく昨日生ハムを用意しておいたのに、食べても食べてもサラダの味が全くしなかった。
寝よう、そうだ寝よう。
そうして私はベッドに入った。
と思ったら
“ブーブー”
着信音をオフにして、マナモードにしていたため、バイブの音がベッドに轟いた。
画面を見ると、ヨッシーさんからだった。
「も…もしもし」
「あら?敦子元気ないわねえ。どうしたの?」
「どうしたもこうしたも…昨日SNSが鳴りやまなくて」
「あら、もしかして」
「?」
「うふふ!朗報を聞かせようと思ったんだけど、また元気な時に話すわ。今から仮眠ってとこかしら?邪魔しちゃったわね」
「…ろーほー?」
「そ。朗報!また電話頂戴」
と、ヨッシーさんの電話を終えた。
そして私は、泥のように寝ていく。
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