6
“ブーブー”
買い物が終わり、帰宅して買い物袋をカウンターに置くと、スマートフォンの着信音が鳴った。
画面を開くと、ユウちゃんからのメッセージが受信されていた。
「お疲れー。疲れた」
ん?今日はよほど仕事が大変だったのだろうか。
「お疲れ様。大変だったの?」
「うぬ。大変だった」
「何かあった?」
すると、すぐに来ていた返信が途絶えた。私は、返信を待つタイミングで夕食にとりかかろうと、買い物袋から買ってきたものを取り出し、夕食を作ることにした。
ユウちゃんに、今日何があったのかな。
冷蔵庫から、朝に解凍しておいた豚肉を取り出し、買ってきた白菜を洗い、包丁で切る。
コンロの下の引き出しから土鍋を取り出し、土鍋に水を入れて火にかける。そのタイミングで“ブーブー”と着信音が響いた。
「暇な日ある?俺明日暇」
「あるよ!今日はもうご飯作ってるけど、明日なら大丈夫」
「わかった」
「仕事帰りにする?」
「うん。何時ぐらいに終わる?」
「大体十七時半には会社を出れるよ」
「明日休みだから、店の前に行くわ」
「えっ?待たせるかもしれないよ」
「いいの。会いたいから」
鍋に綺麗に彩る白菜と豚肉の間に、菜箸を強引に突っ込んでしまった。若干お行儀が悪いと思いながらも、スマートフォンをうまく立てながら、火の元から少し離れた場所に置いてメッセージを作りながら見ることができるようにしていた。その為、免疫のないメッセージなんて見たときには、ミルフィーユが動揺して、ほら。
「ただの白菜煮…」
となってしまう。
「んふふ」
「……ほう」
カウンター越しで、私の様子をこそっと見ていた両親が、スマートフォンを覗く。
「やりよるのう」
「ほんまでんなあ」
「………」
相変わらず両親は、仲がよろしいことで。
そんな仲睦まじい二人を見て育つ私も、いつかこんな夫婦になれる日がくるのかなって思う時もあった。
今が一番、幸せな人生を送っているのかもしれない。
煮崩れしてしまったミルフィーユ煮を、何とか整え直した後、用意してあったダイニングテーブルにある鍋敷きに置き、三人でおいしい鍋を囲んだ。
気づけばもう十二月。
温かいご飯、飲み物がとてもしみわたる、そんな時期。
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