2



「精が出るわねえ。若いっていいわん」



晩御飯を食べて夕食の片づけをした後に、部屋にあがってコラム記事についてを調べながら、記事の内容を入念に調べていると、母が夜食を持って部屋を訪れてくれた。



「ありがとう。でも気を遣わせちゃうから夜食いらないよ」

「いいのよいいのよ!私も食べたいもの」



と、先日百貨店に行きたいといった母を連れて物産展を物色していた際に、「これ!絶対当たりよ!」と、母は総菜を衝動買いした。その中で「ひじきとニンニクの醤油炒め」という、ご飯にかけるととっても美味なものを購入し、それをご飯に混ぜ込んで握ってくれたおにぎりと、母が淹れてくれた梅昆布茶が小さなお盆に用意された。



「これ、おいしいわよ~」

「いただきます、あ。本当だおいしい」



キーボードの手を止め、作ってくれた夜食を手に取り口にした。ニンニクの効いたおにぎり。ご飯と合うだけではなく、混ぜ込んでいる量も絶妙。



「どう?体調は?」

「もうばっちり」

「ならよかったわ。あまり無理しちゃだめよ」

「ありがとう。私ももう無理が祟る歳だから、適当に寝るわ」

「何言ってんのよ~!まだ若いじゃない」

「…もう三十超えてるのよ」

「あらっ!気づけば三十路ね三十路っ!」

「…そろそろドラマのCM終わるんじゃない?」

「あらやだっ!」



毎週日曜夜九時に放送するドラマを見ながらおにぎりを作ってくれる母。そしていつも手作りの夜食をこっそり作って部屋に持ってきてくれる。「CM中に持ってきたわ!」と張り切っていってくるが、こうして話しているとあっという間にCMが終わってしまうことに、母は未だ気づかずタイミングもつ噛み切れていない様子である。



「いそがなくちゃ!」

「あ、食器は私が持っていくから、気にせずに」

「ありがとう!」



感謝を伝えたいのは私の方なのに。母はいつも優しい。



「お父さん!一人だけ見てずるいわっ!」

「降りてこないお前が悪い」

「いじわるっ!止めてくれてもいいじゃない」

「…テレビだから止められないだろう」



父も母と仲良くドラマを鑑賞している。というか、父はドラマに夢中になっているため、CM中もテレビに食いつくように見ている。

そんな他愛のない会話、そして少しだけの気遣いが私のやる気をさらに掻き立てた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る