やりくり

「「いただきます」」


夜の8時前。おれと遥香は向かい合わせでテーブルに座り、揃って晩御飯を食べる。

今日は時間もなかったし、簡単にカレーにしてみた。


「相変わらずめちゃくちゃね、あの人……」


スプーンをかちゃかちゃと動かしながら、遥香は引き気味にそう言った。


「まぁな。ても、さすがにそろそろ慣れてきたよ。それより、そっちの方はどうなんだ?」


「あたし?あたしの方は順調よ。それに彼女自身、頭が良いから、すぐに理解してくれるのよ」


「なんて名前だっけ?」


「瑞樹ちゃんよ」


「ああ、そうそう」


確か今年中3の子なんだよな。前に遥香からそう聞いた気がする。


遥香は大学に進学と同時に家庭教師のアルバイトを始めた。今はその瑞樹ちゃんという子のところで勉強を週3のペースで教えている。

遥香がバイトを始めた理由はもちろん、おれ達の生活費の為である。


「そういえば、今月は足りそう?お金」


「ああ。少ないけど、なんとか貯金にも回せそうだよ」


食べ終わった皿をカチャカチャと片付けながら、遥香の問いに応える。


「ああ、よかった。さすがにお父さん達に借りるのは気が引けるのよね……」


遥香はソファに移動し、もたれかかりながら、安堵するように小さく呟いた。


「まぁそうだよな。今でも十分、出してもらってるしな」


同棲を始めるにあたって、おれ達はそれぞれの親に自分たちの考えを予め話しておくことにした。

18歳で同棲を始めるのがどういう意味かと、それに対してきちんと理解を得る為に。勢いだけで進められるほど、現実は甘くないと思ったからだ。まずは、最も重要であり、最も大変なお金の工面の部分からおれ達は説明をした。


今、おれ達が住んでいるマンションの家賃が管理費を含め7万、光熱費、水道代等が合わせて1万5千円、携帯などの通信費が2人合わせて1万6千円、雑費が2万円、食費が4万円、合計で16万1千円の支出である。


対して、それぞれの収入が遥香は週3の家庭教師で7万2千円程。

おれは週4のアポロでのバイトで10万程。皐月さんのアシスタントをすれば、短時間ながら5千円程の臨時収入がある。

合計すれば、月に大体17万円程の収入があることになる。

数字だけ見れば、収入の方が上回っているので、なんとかやりくりできそうだが、これを毎月クリアするのが、かなり大変なのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る