第2話 モンスター遭遇
たえの服装をじっくり見る。彼、いや彼女は頬を赤らめていた。よく手入れされた肌、うっすらと乗るファンデーション、いや装備を見るんだった。
初心者が良く身に着けるローブをまとい。大きめのとんがり帽子がアンバランスで、手には年季が入ってなさそうな杖を持っている。
「魔法の素は買ったのか」
「回復魔法を多めに、攻撃魔法は5つぐらいかな」
「まあ最初だからそれぐらいだろう」
森の中では人工的にホロスコープを多面鏡を利用して加工し、地上の座標には、現実の天空とは別のホロスコープが展示されている。海王星のパワーが増えるように細工されていて、暗示にかかりやすい人は、潜在的に魔力が使いやすくなる仕組みだ。魔法の素は、簡素な漢方薬と火力大き目の花火その他薬品だが、魔法的効果が目視できるようになっている。
でも俺は男だから、その手のホロスコープには影響を受けない。だから剣士を選んだ。今日はこの安物の剣で敵をぶった切って経験値とお金を稼いでやるんだ。
「そろそろ行きましょう」
たえにそでを引かれて、外に出る。やさしそうな門番が、気を付けるように告げて見送ってくれた。レンガ造りの壁を越えてしばらく舗装されていない道を歩くと、がさがさと繁みが揺れる音がした。
「敵よ」
たえが叫ぶと、目の前にはロールケーキが二個並んでいた。
「えっ」
それはモンスターと呼ぶにはあまりにもひ弱なただのロールケーキだった。
「油断しないで、カロリー高めよ」
たえは手から火の玉を出すとロールケーキにぶつけた。表面が焦げて焼け目がついた。
「いや、食えばいいんじゃないの? これは」
俺は焦げていない方のロールケーキをわしづかみにすると口に入れた。口中に広がる甘いクリーム。
「これだから男は」
たえが俺を睨みつける。たじろいだ俺は、手持ちの剣でいやいやながら残りのロールケーキをぶった切った。
ロールケーキをやっつけた。経験値といくばくかのお金を手に入れた。
「あのね。ロールケーキはカロリーが高いの」
たえは眉間にしわを寄せて、俺を睨みつける。なぜか怒っていると思った俺は笑みを浮かべて丁寧に話しかけた。
「大丈夫だよ。今度あいつらが来たら俺が平らげてやるよ」
「おバカさんね。モンスターなのよ。太るわよ」
そんなに急に太らないだろうとおもったが腰回りがきついような気がした。鎧の間に手を滑りこませて腹を探ると少し厚みが増していた。
「やばい。なんだこれ」
「ほらみなさい。これからは諦めて退治する事」
俺はここのモンスターの怖さをまだ軽く見ていた。運動すればカロリーは消費できると考えていたのだ。
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