モテない高校生だけど放課後に冒険者やってます

楽人べりー

第1話 はじめての冒険そして相方

 夏休みが終わり残暑の陽光に照らされている灰色の蟻塚にまたそぞろ夏服にそでを通した若者たちが集まってくる。彼らは長時間学校に拘束される。知識を吸収するという建前の懲役に服さねばならない義務があった。なぜかって? いい進学先を見つけて幸福になるためさ。


 そんな古臭い価値観を捨て去った俺は、今日も居眠りを程よくブレンドして一日を終わらせる。教師の軽蔑したまなざしなどはどこ吹く風。俺には当てにならない未来よりも楽しい物を見つけたんだ。


 終了のチャイムが鳴り、俺は後者を後にした。要するに帰宅部ってやつだ。だけどただの帰宅部ではない。ゲームやTVには関心がない。俺には別の楽しみがある。


 家とは反対方向の列車に乗り、野生動物が数多く潜みそうな森の近くの駅で降りた。もっとも森にいるのは、ただの動物ではないのだが。


 近所の喫茶店に立ち寄りロッカーのカギを開ける。中には冒険者としての装備一式が積んであった。防具を身に着け、安物の剣を手に取る。いつかネットでのバイトで稼いだらもっといいものを買うんだが。


 店内に入りあたりを見回す。冒険者デビューにあたって魔法使いが一人欲しい所だ。できれば回復系魔法のつかえる女子。


 知り合いがいた。同じ学年の鳥羽だ。彼はちゃっかり、色白の女性魔法使いを仲間に入れていた。


「よう栄。仲間は見つかったか」

「ああ、こ、これから探すさ」

「一人で大丈夫か? お前女性恐怖症だろ」


 痛い所を突かれた。彼が連れてる女性魔法使いが興味深そうに俺を見てる。その視線に見開かれた瞳孔に俺のハートはどぎまぎする。


「あの人誰なの」

「同じ高校の林田栄、モテないことで有名なんだ」

「ふうん。前途多難ね」


 モテない男と紹介されたせいか女性魔法使いは、興味を無くし鳥羽とプランを練り始めた。俺は手あたり次第に一人でいる女性魔法使いに声をかけたが、上ずった発声が不安を誘うのか、ことごとく撃沈してしまった。


 独りテーブルで打ちひしがれる俺に、誰かが声をかけた。甲高い声。もしや逆ナン?

「私、魔法使いやってます。仲間になっていいですか」

「はい喜んで」と返事して相手を見ると、髪は長いがうっすらと髭の残る化粧の濃い謎の人物がいた。

「MtFの仲間太一といいます。よろしくお願いします。太一じゃなんだから、たえって呼んでね」

「ああ、うん。よろしく」


 これが噂に聞くトランスジェンダーかと思ったが、相手に失礼だと困るので気にしないふりをした。実は彼女探しも兼ねていたので少し落胆していたのは内緒だ。


 よくみると亜麻色のロングヘアーにピンクのルージュがまぶしい。生まれて初めて至近距離で見る異性の姿に俺は半分ドキドキした。だが、潜在意識はしっかりと

「こいつ男だからな」と耳打ちしていた。

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