第二十一話『アズサとメレア』
……………
……………
……………
夢を、夢を…視ていました
とても、不思議で
気持ちの悪い、夢
此はわたしが知らない宏大な原野
快晴の下、眼前に拡がるのは
沢山の人、人、人の群れ
押し寄せるは赤軍
迎え撃つは、青軍
誰かが放った大きな魔法
灼熱度の炎が十字架の形を型取って燃え上がり
剣戟の音が忙しなく兒玉して
何人もの首が彼方へと飛び
その時、わたし、乗れもしない筈の馬に跨がってて
他人事の様に、呆然と周囲の奇景を眺めてて
着た記憶すら無いドレスは、返り血で真紅に染まってて
その時、馬に横付けしてきた綺麗な女性に怒鳴られて、ハッとして
向かって来た敵兵の軍に水弾を幾数も作り出しては惜しげなく発射して殺す。L1弾だけで敵兵は軽く首が胴体から捻じ切れる。
そんな…わたしの水弾…そこまで強力じゃない…なんなのこれは…
わたしの魔法を受け、馬ごと転びながら絶命していく敵兵。
その間には、先の女性は匠な手綱捌きで馬を操って
何人もの敵兵を蹂躙して剣で首を跳ね飛ばしていました
この女性は誰だろう、見た事があるような、ないような…
これは、夢だから?
わたしはたった今、知らない人達の命を魔法で奪ったのに、
浮かび上がる感傷が、もう無い───
「ん………」
そこで、夢から覚めました。
わたしの視界一番に映るのは、無機質な天井です。
「………ん、あ………?」
冷たい、固い。頭が、痛い。
石床にそのまま後頭部を寝かせていたので、そう感じてしまうのも仕方ありません。
未だ意識の覚醒は無く、眠気眼で見渡す世界は、全てが灰色。
「むー………」
ポリポリと髪を掻きながら『どうして自分は此んな所で寝ているんだろう?』と、思考を巡らしますが、目前に奇怪な物を見付け、中断します。
這ってそこに辿り着くと、奇怪な物を両腕で掴み、何となく揺らしてみます。
ガチャン、ガチャンと金属が打ち鳴らす音響。
なんで、これ、鉄格子が。
「あ、そうか。此は牢屋?」
なら鉄格子があるのは当然ですね。牢屋なんですから。
この一個空間、窓は無し、全部石の壁。
罪人を閉じ込めるには最適。
「えええええッ!?!? なんでわたし牢屋なんかに入ってるんですかっ!?
え、ちょ、誰か! 誰か来てェえええぇえ!!!!」
漸く思考が一回転して、今置かれた状況に及びました。
いや、及びましたけど、何が! どうなって! 何故こんな事にッ!?
ガッチャン!ガッチャン!とさっきとは比べものにならないぐらい鉄格子を激しく揺らし、
周りの注目を得ようと試みますが、金属の歪音だけが虚しく響き渡るのみ。
次に、腕一本入るぐらいの狭い隙間に顔を押し付けるようにして埋め、
先の情景を視界に納めようと努めます。
「むぎゅぅう!! だ、誰か~、牢番も居ないんですか~? 流石にそれは不用心ですよ~」
どうやらこの空間にはわたししか居ない様子。
両隣に同じ牢があるかも知れませんが、人の居るような気配が感じられません。
その後も、牢番か誰かが音に気付いてやって来ないかと、鉄格子を叩いたりしましたが、
途中で無駄と諦め、大人しく壁際まで下がり寄り掛かりました。
「いっっ……!?」
これから何をやればいいのか何も思い付かず、ぼぉ~っと視線を牢屋内に彷徨わせていると、
不意におでこにズキリとくる鈍い痛みを感じます。
触ると、こりゃまた痛い。
こんな所に怪我なんて───、ああ………
「そう、か…わたし、あの時、頭に魔法当てられて気絶したんだ…」
進路を塞がれたので、仕方なく魔法使いと対峙しましたが、そこから先の記憶がスッパリと抜け落ちています。
わたしは文字通り、瞬殺されたのでしょうね。
「はぁぁぁ…………」
膝を抱えて、蹲ります。
冷静になる環境と時間がある分、色々と考えられます。
………今の状況的に、悪徒だったのは、わたしの方ですよね…?
わたし、第一皇女レヴェッカ様に玩ばれていたんですね…
そりゃそうだ。明らかにおかしかったですもん…
それでも最後まで付き合ってしまった自分が馬鹿クズ過ぎて、溜息しか出せません。
………こうして自分が牢屋にぶち込まれたと言う事は、レヴェッカ様は己の内実を自白していない。
しないですよねー『イタズラ大好きその後は知らん』みたいな心持ちなんでしょう。
と言う事は、わたしの無実を証明する方が早速、現状皆無になる訳なんですが。
んむ…、罪状は『第一皇女誘拐未遂』って所でしょうか?
こりゃ死罪かなぁ、やった事は立派な大犯罪ですからね。
反論の余地もなければ、無実の証拠もありません。
きゃっほーい! わたしオワタ
享年十六歳
「ざっっけんなァア!! そんな終わり方がありますかァあああああああいいいッ!!!!」
怒涛の勢いで鉄格子まで近寄って再度ガッチャンガッチャンやっちゃいます。
こんな!不条理!認められるかッ!!
「出せェー!! 冤罪ですよォォオオ!! わたしのバックには凄い魔女が付いてるんですからね!!
三秒で十回殺されても知りませんからねー!!!」
有らん限り捻り出した声は、無情にも此に兒玉するだけ。
やがて無音となり、沈みます。
誰も居ない。
誰も来ない。
寒い。
淋しい。
怖い。
やる気が失せて、そのまま後ろ向けに倒れ込みました。
カナード様にお渡しする菓子詰めやら手紙が入った小物入れは、今はありません。
魔法も、使えません。薬筒が全て取り上げられてます。
まぁ、この辺は至極当たり前の処置でしょうね。
指輪は―――、あ、チクショウ、ある。
呪いだから、外そうにも外せなかったようですね。
わたしが気絶しているので『相手に渡す気がありません』
洞窟以降あの指輪は首に架けてアクセサリ風にしていましたが、どうやら無事のようです。
とは言え、呪い魔装具だけで何が出来るのか。食べられもしないし。そも毒だし。
「あ―――、今何時だろう…、師匠、怒ってるだろうなぁ…」
窓が無いので、昼なのか夕方なのか夜なのかサッパリです。
体内時計は、多分夜十一ぐらいを指していると思いますが…
今頃は寝ている時間帯です。今まで気絶寝していたので現在眠気はありませんけどね。
師匠は、今、どうしてるかな…
案外、わたしが帰ってこないので寂しくて泣いているのかも。
うぇぇ、想像したらキモい。と言うか有り得ないわこれ。
「ああ、思考が蕩ける」
もはや、どうでもいい事まで考えています。
これは、脳が諦めかけているのかな………
「―――!?」
瞬間、今しがたの脳内雑念が一挙に消し飛び、ビクッと揺れる両肩。
突拍子無く、ガバッと上半身を跳ね上げてしまいます。
「お…?」
今、『ギィィ…』って重い扉が開いたような音が…
これは、空耳…? いや…
両耳に手を充て、澄ませます。
此は音の無い隔絶された空間。
些細な異常すら、このアズサ=サンライトは聞き逃しません。
聞こえる…。
今度は、靴底が床を蹴る音が。
しめた。不在だった牢番が帰って来たみたいです。
絶好の機。兎に角、わたしの主張を聞いて貰いましょう。
絶対に取り合わないでしょうが、今を改善する為の一石は、現状この方法しかないんです。
願わくば、『絶壁の魔女』ことカナード様に会わせて欲しい…!
あの方なら、聡明な見解で事の真相を汲み取ってくれる。
如何にも難しい所ですが、牢番をどうにかして口説き落とし、カナード様と接見さえ出来れば、
此から出られる可能性は飛躍的に上がる筈です。
頑張れわたし。
千載一遇のチャンス。何処までも食らい付いてモノにしろ!
弾ける足音は、距離を縮める度に空間を響かせます。
今更ながら緊張の荒波が押し寄せて、生唾を飲み込みました。
だって、わたしは今、大犯罪人
その事実が肩を潰す程の重みになって、伸し掛かります。
これから出会う牢番も、きっとわたしが知らぬ相手。
牢番なんだから、罪人の扱いには手慣れているでしょう。
『カツーン』と一際大きな音を最後に、この場が静寂に戻り、人の気配が目前に燈りました。
わたしは、恐る恐る、下げていた目線を上げていきます。
鉄格子の隙間から覗くは、スラッと伸びる美しい御足。
壮観な括れのライン、包み込むは白柄と青柄が合わさった清涼感ある魔法学校の制服。
肩の腕章の翼は、金色の三枚
魔法使い三塔───
肩を流れる、嫋やかな青髪
少しキツ目の目元
初見で感じた中性的な美貌は、こうしてよく見れば、中性ではなく、ただただ美麗の一言。
美人度のベクトルは師匠方面とお見受けします。
はい、この方、多分てかきっと確実絶対、牢番じゃないですね。
さっきまで、リエリア城敷地内でわたしを追っていた魔法使いさんその人です。
うッわああああああ!
よりにもよって何でこんな難攻不落そうな御方が!
口説き落とせる訳がないじゃないですか! 当人ですよ当人!
わたしを牢にブチ込んだであろう方相手に弁論を尽くしてどうして信じてくれますかッ!?
折角の機宜を摘み取られた気分です…酷いよぉぉ…
「アズサ=サンライト、だな?」
透き通る冷たく平らな声が、頭上から発せられます。
叱られた子供のように体が敏感に反応し、縮こまってしまいそうになります。
わ、わわわ、わたしの名、バレてる!
くッ…もう、そこまで調べが及んでいるんですか…
今更ながら、レヴェッカ様にさえ出会なければこんな事にはならなかったのに…、と思ってしまいます。
尤も出会ったと言うよりアレはなんだろう、寧ろ向こうから意図して出会ってきた感
師匠の庭では、わたしの体力が生き道を切り開きました。
でも今回は、わたし如きでどうにかなる障害ではなさそうです。
これが運命ならば、諦めて断罪されろって囁いているんですね。
なら、仮に、百万歩、譲る。
けれど、後を濁す事だけは、嫌。
第一皇女が相手だろうと、皇帝が相手だろうと、
そこだけは、せめて抗いたい。
わたしが『アズサ=サンライト』と認めれば、恐らくは故郷ディレイの人達や師匠の立場は悪くなる。
そんな不孝、出来る訳ない。
したくない。絶対。
もしそんな事になったら、わたし、死んでも死にきれない。
だから、悪あがき。
謂われぬ罪、背負いしわたしの、これが、精一杯の悪あがきです!
喰らえ…、そして願わくば、昇華して言霊と成れッ!!!
「誰デースカソレハ?
我、此ヨリ遠イ遠イ国二住ム貴族デゴザリマス」
この目は右を向きながら口は左方向という変顔、そしてこの裏声
演技はきっと完璧。
上手く騙せれば、罪を揉み消す事すら不可能ではない奇跡の一手。
奇才過ぎる。流石はわたし!
しかし、何故かな。青髪魔法使いの目はもの凄い冷たくて…
「……ソ、ソノ蔑ム目ハ非常二無礼ナリ!」
「一応聞くが、欺いてるつもりか? それは」
「ナ、ナンノ事…?」
「虚偽しなくていい。君は『アズサ=サンライト』だろう?」
「………ええそうです。ええーそうです私の名は『アズサ=サンライト』で・す・よッ!
貴女は絶対に信じないでしょうけどわたしは潔白も潔白! これは冤罪ですッ!
レヴェッカ様のイタズラに巻き込まれた言わば被害者なんですよ!!
そんなわたしを刑罰を下したりしたら絶対のゼーッタイ後悔しますし夜な夜な化けて出ますからね!!!」
通じなかった演技をスッパリ諦めたわたしは、
ガルルルルと荒んで噛み付かんが如く鉄格子を掴み、青髪魔法使いを睨み付けます。
「分かっている。今、牢錠を外す。もう一寸の間、辛抱してくれ」
「全然分かってなァァアあああいッ!!!
大体こんな『孅弱くて』『可愛らしい』一般市民が第一皇女誘拐なんて企てると思いますかッ!?
そりゃあ最後までレヴェッカ様に言い包められたわたしも悪いっちゃあ悪いですが禄に調べもせず一方的に悪と決め片付けるその―――って、………あれ???」
憤慨に身を任せ、言葉を巻くし立てるわたしを他所に、
青髪魔法使いと言えば、身を屈ませて何やらカチャカチャと密業しています。
一際響く留め具が滑る音が、わたしの耳に届くと同時に、牢扉が軽い調子で外側へと波を打つようにして開かれました。
「………、………罠か!?」
困難を極めた先にあると思っていた牢屋の入口、余りにも呆気無く、それが敵方の筆頭の手によって口を開ければ、
誰もが真っ先に悪質な意図を感じる筈。
これはあれです、試されている系の、安易に出れば罪が確定するみたいな…
一度そう思えば、これは、もうそうとしか見えません。
わたしは、一層の懐疑の表情で鍵束を指で回している青髪魔法使いを見上げます。
当人は『どうした? 早く出て来い』みたいな風体で、入出口先で構えて待っているようですが、それには応じません。
多分、双方意図しないままに生まれた膠着状態。
青髪魔法使いが牢扉を開けてから、大体一分ぐらい経った頃でしょうか…
その間、わたしは此で微動だにしませんでした。
「………警戒するのも、まぁ、無理はない、か」
そう言って、何を思ったのかこの方、牢扉を潜り、こちら側へ入ってきたではありませんか。
わたしから見れば、これは痺れを切らした、強行手。
こんな狭い場所で、一体どうする気ですかね…?
いや、そんなのは、分かり切っています。
「く、来るなら来い! わたしは素手でも結構強いですよ!!」
こちらは空手。魔法使い相手に敵う道理がありません。
それでも向かって来る以上、無抵抗でやられはしませんよ。
前回は多分瞬殺でしたが、今回は何かしてやるッ! あの端麗な御顔に軽い引っ掻き傷ぐらいは!
あれ…、でも此で暴れたりしたら、更にわたしの罪が重くな………る?
ううぅ、この状況では大人しくボコられる方が利口なんでしょうかね…、うっ…うううぅ!!!
もはや何が何やら
ただでさえ許容範囲が狭い脳ミソが錯乱して更に狭まってしまっている状態です。
そんなわたしにこの方、トドメとばかりに追い撃ちを掛けてくるんだから、
長い糸がポケットの中で複雑に絡まっちゃうみたく錯雑が極まってしまいます。
「済まなかった。………私の状況把握不足だ。私が、悪い。
許して貰えるとは思っていない、どうか存分に責めてくれ」
「!?!?!??」
神妙な面持ちでわたしの前まで迫ると、青髪魔法使いは両膝を折り曲げて床に付け、上記を述べて頭を下げてきました。
は…、なんですとォォ!?
「や、え? う…、あ、あの! いや、そんな、御顔を上げて下さい! 責めるつもりなんて、ぜぜ全然ありませんので!!」
あわわ、はわはわはわ!!
先程まで纏っていた渦巻く熱気は、こんな突拍子無い行動を取られたせいで、どっかに飛んでいっちゃいました。
目玉がグルグルしてしまいそうなテンパり具合ですが、どうにかこうにか、言葉を口から繋ぎます。
よくは分かりません。分かりませんが、わたしのように床で衣服を汚していい御方じゃない。
頭を下げられる謂れも特にあ…りません。………多分
上手く伝わったのか疑問でしたが、こちらの提言を聞き入れてくれたらしく、
青髪魔法使いさんは充分な間を置いた後、顔を上げてくれました。
いや立ち上がって欲しいんですけど。
「無論、これは皇族側の失礼。言葉だけの謝罪で済まさないつもりだ。しかるべき償いは後に必ず。
が、今はこうして言葉でしか気持ちを現す事が出来ない。
………そうだ。これは君の持ち物だから、返そう」
そう言って、青髪魔法使いさんが後方から取り出したのは、見覚えがある小さな赤い小物入れです。
ああ…これ、取り上げられたわたしの私物です。
「『血吸の魔女』の欠席届けに関しては『絶壁の魔女』が確かに受理した」
小物入れを受け取る際、わたしに向け、こう言われました。
肝心な欠席願いは、無事にカナード様へと渡ったそうで、
そこだけは今日一番の安堵を得られました。
色々とありましたが、お使い自体はこれにて完了のようですね。
サイン? いやー無理でしたごめんなさいホグワさん。
「カナー……『絶壁の魔女』様がわたしの無実を証明してくれたのでしょうか?」
「ああ。アズサ=サンライトは『血吸の魔女』の使者で無実無害を全責任を持って保証するので即刻解放するように、と。
同時にそこで私は『絶壁の魔女』に今度の一件はレヴェッカ様の質の悪い悪戯だと諭されてしまった。
………思えばそこに至るのが真っ当な人の頭。本当に戯れのピエロを演じていたとは、自分が滑稽過ぎて泣けてくる」
ズーンと沈むオーラを放ち、青髪魔法使いさんは再び顔を俯むかせてしまいました。
やっぱり、カナード様は凄い方です。偶にも欠席願いが巡りましたが、まさか一読で全容を汲み取ってくれるなんて…
これが師匠ならば「へー、ふーん」でポイして終わりに100レナー賭けます。
「ちゃんと私が気付いてさえいれば、此まで君を巻き込む事は無かっただろう。本当にすまな………、いや、すみませんでしたアズサ=サンライトさん」
心から詫び、謝罪の意を述べている真摯さを感じました。
式典で対峙した時の、あのピリピリとした敵意は見る影もありません。
色々と思う所があって、相当堪えているようですね。
………思えば、この方もわたしと同じ被害者側なんですよね。
なら、もう充分です。
この方を責めるのは御門違いですし、わたしは外に出してくれさえすれば、後はもう気にしない事にしましょう。
「え、っと…、青髪さん?」
「アランス、と、呼んで頂けるなら」
「ならアランスさん。………アランスさんのお仕事は第一皇女殿下護衛なんですよね?
なら、恥ずべき事なんて何もないですよ!
今回だって経緯はどうであれちゃんとレヴェッカ様を御救いしていましたし!」
力強く語りかけます。
まだ会ったばかりなのですが、この方は沈んだ顔が全く以って似合いません。
何より、きっと最優先でレヴェッカ様の事を案じての結果。
それに落ち度こそあれ、こんな方にそこまで尽くされるのは、純粋に羨ましい。
「………優しいな。私は、君の怨み言を一身に受ける覚悟をして来たのだが」
アランスさんはそう告げると、腰を上げて立たれます。
わたしは頬が僅かに熱を帯びるのを感じました。
先程まで凄い怨み事を言いまくっていましたからね。
「うっ、怨み言の一つや二つは仕方がないですよぉ?
だって気付けば牢屋にブチ込まれてましたし、それにそもそ―――」
言葉が、不意に途切れます。
突如来たソレにわたしは抗う術を持たず、その場で蹲ってしまいました。
「おい、どうした?」
アランスさんが慌ててわたしを介抱してくれます。
優しさが身に染みます、でも今はそれ所ではありません。
わたしは臀部辺りを抑えつつ
「お腹が…」
「腹? 腹が痛いのか!?」
「……お腹が空いた………」
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