彼女の街で 2015年01月04日(日)
仙台まで母が見送りに来て、新幹線で東京へと向った。
横浜のホテルで一泊し、旧友と連絡を取った。一人はO君でもう一人はH6君だった。
O君は今、「三人で生活してるから、俺の所に来い、とは言えない。」と言った。
でも岩手で話して以来、ずっと話していなかったから嬉しかった。
近くまで来ていることをメールで伝えれば、電話に出てくれるんだ。と思った。
海辺の彼女の街近くの民宿に泊まり、宛(あて)も無いままかけた電話に出てくれたのはH6君だった。H6君は「呑もうよ。」と言って会ってくれた。
H6君と会ってる間も、もう奥さんのようになった彼女の声が聞こえていた。
相思相愛(そうしそうあい)で、彼女の街まで来た私を歓迎(かんげい)してくれてるかのような佇(たたず)まいだった。
まるで旦那(だんな)の酒吞(さかの)みを制すように、「そのくらいにしときなさい。」とかそんな声がH6君といる間中(あいだじゅう)も聞こえてた。H6君には噯(おくび)にも出さないようにして気づかれなかったと思うが、学生の頃のことを一頻(ひとしき)り話して、今のことを伝えあって、私はこっちに出て来たんだと言い張った。
いい飲み会だった。二人だけの差し飲みだったけど、H6君が社交的なおかげだった。
そこまでは良かったのである。H6君と別れて電車に乗り、元の民宿に向けて電車に揺られてた私だったが、おしっこをしたいとほろ酔いで途中下車(とちゅうげしゃ)してしまうのである。
そうしてまた幻聴ワールドにハマって行った。説明しづらいが私はこの時も声に操(あやつ)られていた。
海辺の街だから海沿いを歩いてれば時期に着くと高(たか)を括(くく)って良い気分で歩き始めた。歌を歌ったりもした。そして幻聴の中で笠ノ宮の生い立ちを聞くのである。
笠ノ宮は異常(いじょう)な程(ほど)際立(きわだ)って頭の良い子供だったらしい。
そうして関東全域(かんとうぜんいき)の都市計画(としけいかく)を行ったのも、今の世の中があるのも笠ノ宮に依(よ)る所が大きいのだそうだ。
笠ノ宮は男系の血を引く隠(かく)れ宮家として幾千(いくせん)の女性と浮名(うきな)を流し、天皇家の血筋を守るというお題目(だいもく)をいい事に、何人も子供を作った天下人(てんかびと)のような存在だったのだ。
そういうことが罷(まか)り通(とお)るようにポルノなども規制(きせい)されずに残されたのだと言う。
だから実際は皇族の存続(そんぞく)が危ぶまれるという話は今あって取り沙汰(ざた)されているが、もう次の時代の準備は万端(ばんたん)整っているというのである。
男系の血筋を引く後(のち)に天皇に即位されるべき血のスペアは腐(くさ)る程(ほど)居るというのだ。
その他に聞こえた声は懐(なつ)かしい大学時代の面々の声だった。
来(きた)るべき新しい時代の到来に私が貢献(こうけん)したかのように、私と彼女の恋愛は年を経て語(かた)り継(つ)がれるものだと言うように私はヒーロー扱(あつか)いだった。
お酒に酔って随分(ずいぶん)気分が良かったんだろう。
でもいきなり、かくれんぼが始まったんだ。あの病院の中に隔離(かくり)されてる彼女をセクシータレントの中から救い出せ、というかくれんぼだった。
私の足は海辺の病院へと向ってしまうのである。
そうして、朝になるまでうろちょろして、エレベーターの7階と8階の間にある階段でしか行けない部屋に声を通(つう)じて通(とお)される。
そこには笠ノ宮の遺体(いたい)が安置(あんち)されてると言うのだ。
私は小さな小部屋が二つ続いてるそのフロアの前まで行ったがフロアには入らなかった。
怖かったのである。そして1階に下りると急に彼女がこう言い出すんだ。
「そのガラスの扉(とびら)を壊(こわ)すのよ。王になる試練(しれん)なの。」と何度も躊躇(ちゅうちょ)する私に何度もけしかけた。
そして私はガラスの扉を蹴破(けやぶ)るのである。今考えると深夜にも窓口があって開いていて、でもひっそりとしてて私がうろちょろしてても捕(つか)まりはしない、変な病院だった。
その後(ご)、私の代理の母親を務めることになった秋篠宮紀子親王妃殿下の声で私は病院の外の変電施設(へんでんしせつ)に入って、スイッチを押したり消したりしてしまうのである。
それをこうしてこうしてと、どんどん指示が入るのである。
最後に管理人室(かんりにんしつ)みたいな所に行って二人ほどの人に会ったが、「君!何してる。」とか言われて捕(つか)まえられたりするとか、そう言うのじゃなかった。会ったと言っても挨拶(あいさつ)もせず、見ただけで帰るのである。
彼女もセクシータレントも結局(けっきょく)救い出せず、朝になった。
大学の同窓生たちが最後に「カレー食ってますっで締(し)めて下さい。」と言われて近くのコンビニでカレーを買って頬張(ほおば)った。
そのまま、次の日は道も分からず病院を後(あと)にして駅が見えたので何線かも分からず乗ってしまうのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます