大学時代22 2014-03-09
私がここで書きたいのは病気の兆候の見え隠れです。
どうしても、彼女と喧嘩(けんか)別れになったのを解消したかった。
もう普段の脳の機能さえ衰え始め、普通に考えるということもできなくなってた私はなんとか机に齧(かじ)りつき、また彼女への手紙を認(したた)めていた。といってもどうしても字は崩れ、後でボールペンで訂正するような汚れた手紙しか書けなかった。
全力を出してもそうだったんでしょう。襤褸(ぼろ)切れになった私の心では納得の行く手紙は書けなかったんです。
渡航費は親持ちでしたが、なんとか自分の使えるお金を捻出して、彼女にプレゼントを買って手渡したかった。
そこで協力してくれたのがR3君だった。
先輩に顔が効くR3君は彼女と同じクラスだったO2先輩に頼んでくれた。
直接は渡せなかったが、私は卒業式には顔を出した。
私にとって、彼女をもう見られなくなるのは人生の目的を失うのと同様だった。
彼女が卒業する年に私も辞めるというのが、私の心を支える材料だったのだ。
それくらい真剣だった、自分の心を占めていたという証になるから。
家ではテレビを見ていて、自分の心を救い上げるようなタレントたちの言動に励まされていた。
そんなんで安心してた。彼女も偶然同じ番組を見ていたなら、私の気持ちを蜘蛛の糸のように救い上げる慈悲は持ち合わせていないだろうかという、淡い期待だった。
そんな偶然に縋(すが)るようにして、なんとか心を保(たも)っていた薄暗い貪よりとした心の中、コート作りは中々思うように進まなかった。コートを手渡すことは断念して、その後専門学校に通ってる時期に作り終えます。
納得の行く出来にはならなかったけど、布に触れる時の気持ちの入り具合まで神経を尖らせて、何度も苦難に陥りながらなんとか作り上げるものとなる。
彼女の卒業式の卒業写真を取る場所でT7先生とH6君に挟まれながら見てた。
中々、彼女のクラスの番はやって来ない。二人に勧められてタバコを吸った。
その時、T7先生が取り出したタバコがフィリップ・モリスのロングの3しかも、O君と共に過した日々を思い出させるパッケージデザインの変わる前のものだった。
みんな知ってたんです。私が彼女にどれだけの想いを費やしていたか。
でも彼女は遠巻きに私を見て、「変な人いる。」っと不安げにクラスメイトに隠れてしまっただけでした。
それを見て私は消え入るようにその場を後(あと)にしました。
この頃不思議だったのは創価学会の集団ストーカーが問題視されてた時期がありましたが、その被害に遭っていたんじゃないかってことです。
高級車に若者大勢で乗り合って窓越しにパオーンって奇声を上げる大麻でも吸ってそうな輩(やから)が通り過ぎたり、こちらを見て「今歩いてますよ。」とかって携帯片手に跡(あと)をつけて来る人が居たり、新幹線に乗って帰る時、山手線には黒いスーツを来た中国人しか居なかったり、新幹線の車内は横幅が広くなって縦が狭くなって圧迫されてるような変な感覚でした。
体感的には息が詰まりそうなくらい苦しいというか。
その時でした。秋篠宮紀子親王妃殿下がご懐妊なさったというニュースを新聞で読んでる人を横目に見て知ったのは…
本当か?って思いました。それくらいしか心が寄り縋(すが)る良い事がなかったんです。
帰って来て即、病院行きでした。また母が探してくれた病院に行って、薬を処方されます。
私が彼女にプレゼントしたのはポール&ジョーの香水のセットでした。
限定色の口紅もあって、彼女の顔と唇を想像してどれがいいのかと悩んでいたら、店員さんにオホホホホって艶っぽく笑われたんです。私は不愉快でした。
だから大きい瓶の二つの香りのセットを買って帰ったんです。
R3君は適当でしたから、私にO2先輩が手紙と香水を渡してくれたのか教えてはくれませんでした。かなり長いこと気を揉(も)んだものです。
mixiでO2先輩を見つけて、渡したよ、ありがとうって言ってたよ。と聞かされるまでには半年くらいを要(よう)した気がします。
現実と非現実を綱渡(つなわた)りするようなセピア色の日常はこれで終わりを告げます。
まぁ次は無味乾燥な日常が待っているんですけどね。
感情と言う感情が抜け落ちて、灰のように腐ってしまうにはまだ若さが対抗してくれました。
太ったし、一瞬にして老け込みました。
頭がちゃんと働かない現実を受け止められない敗北感と夢から大きく遠のいたという焦燥感に疲れてしまった精神を埋めてくれるのは音楽だけでした。
詩の深い色とりどりの曲たちに取り憑かれたように聴き入りました。
もう、この頃のことは説明がつかない。
後(あと)から考えて多分、そうだったんだろうなぁと憶測するに留まります。
曖昧な記憶に薄まってく感情。悠仁親王殿下がご誕生なされたのは本当だったし、嘘みたいなこともあったし、現実の区別がつかない、そんな不穏な空気に包まれ始め、専門学校での人との出会いはとっても稀薄なものになって行きます。
この頃からです。人とどう接して良いのかわからなくなってくるのは。
辛(つら)い時期でした。日本晴れのように心が澄み切ることはなく、いつも厚い雲に覆(おお)われて、どんよりと、しょんぼりと、笑顔と若さを失っていく時期に入り始めます。
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