大学時代11 2014-02-03

 大学3年生の話でしたね。バイトをすぐ辞めてしまった所でしたね。


 この頃の記憶は少し曖昧です。学業がかなりおろそかになっていたのは事実ですが他にも何点か書きたいことがあります。



 まぁ、といっても大学時代のことですから、彼女一色なんですが振られるまでの経緯を書くためにも書かせて下さい。


 彼女以外の女性とも、交流があったことは再三(さいさん)書きました。


 が、彼女への想いがなくなったわけでもなかったんです。



 急に思い立って海まで出かけることが何度かありました。


 というのは彼女は海沿いの街に住んでたからです。


 彼女の海を眺めたいと、電車を途中下車してその道のりを噛み締めるように夜通し歩いたこともあるし、自宅から自転車で1日かけて向かったこともありました。


 若いっていいですね。そんな無茶(むちゃ)できて…



 そんな無茶した所で彼女との距離が埋まるものでもないのですが頑張った分、私は彼女が好きなんだと好きならこれくらい耐えられると言わんばかりに自転車を漕いだんです。



 すると、立ち寄ったマクドナルドで不思議なことが起きました。


 自転車姿で立ち寄る人が珍しいのか、女性店員と目が合います。


 コーヒーを注文しただけでしたが、終始にこやかに対応してくれました。


 やたらと目が合って、はにかむように仕事に精を出すその女性は私に好感を持ってるとはっきり理解できました。



 出会って数秒の出来事ですから驚いたけど、こちらも可愛げのある女性の仕草に淡いものを感じ取っていました。



 電話番号を渡すでもなし、そのまま店を後(あと)にするのですが一瞬で仲良くなった二人は何か通じ合ったことがあったみたいに大きく手を振ってお別れをします。


 彼女を好きな気持ちを試してるっていうのに、そんなことに出会(でくわ)して面食らった覚えがあります。名前も年も知らない女性だけど、1日の一瞬の出来事だっただけによく覚えています。何も言葉は交わしませんでした。


 大学生の頃はこんな風に、人と会話もなしに打ち解けるなんて出来事があったんです。


 20代も後半に差し掛かると、こんな無垢な出会いは二度と訪れませんでした。



 私が変わって行ったからでしょうか。帰りもそのマクドナルドに寄ろうとしますが場所は終(つい)ぞわからなくて、別のマクドナルドに入ります。



 持っていた岡本太郎の本を読んで、人目も憚(はばか)らず、涙が流れるのを抑えることができませんでした。




 ここで触れて置きたいことは私が彼女に対する気持ちになんら変化はなかったということです。


 それは、振られても、振られても、変わる事はありませんでした。



 私はこの後(あと)にも前にも彼女以外の女性との交際の入り口のようなものは経験しますがついに、その門をくぐって、彼女への気持ちに別れを告げることはなかったのです。


 良い女性が目の前を通り抜けて行く度、彼女への想いを自問しながらいい加減はっきりしないとなと現実を考慮しつつも、彼女だけは諦められない何かが私をずっと支えてました。それは例えれば、汚れてしまった私の良心のようなもの、確かな夢と希望の種、彼女と描く未来には私が産まれてくる前から憧れていたような温もりがあったんです。


 これだけは忘れていけないもの。これだけは捨てていけないもの。それが彼女への気持ちでした。



 それでも、まだあと数人、紹介する女性との出来事があります。


 今の私には考えられない貴重な女性との思い出です。



 それでは少し時間を遡って大学2年生の頃までタイムスリップします。

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