大学時代9 2014-01-31
いよいよ3年生になります。私は実技が苦手でしたが、立派な職人さんになるのが夢でした。
服作りを勉強していくにつれて、デザイナーよりデザイナーのセンスを実際に形にするパターンメイカーという職に憧れを抱いていたため、服作りに特化した進級を考えていましたが、大学にT7先生という博識なお爺さんみたいな先生がいてその先生の話を聞くのが何より楽しかったのも事実でした。
私はこの先生からデザインのイロハを教わり、何が価値あるデザインでそうでないのかや色々なデザイナーの逸話なんかを聞くのが大好きでした。
私はどうも、デザインに思想を感じるような論理的に奥深いデザインに憧れていたようです。
見た目が新鮮だとか、触り心地がいいとか、そういうことはあまり拘(こだわ)らなかったんですね。
服を着るという行為は、本を一つ選ぶように、生き方を選ぶというか、哲学を着るというか私にとってはその思想こそ、神聖なものだったのです。
T7先生の話はもっと聞きたいなぁと思ってはいたものの、違う進路を選ぶはずでした。
でも、T7先生に直々(じきじき)に入ってくれないかと誘われて心が揺らぎました。
そんなに私を評価してくださったのはこの先生しかいなかったからです。
正直嬉しかったんです。文学部に進路を変更すれば卒業に取得する単位も随分(ずいぶん)と減りました。
この頃から、私は大事な場面で楽な方を選択してしまいます。結果もっと大変な目に遭うのです。
まぁ、それはいいとして、私は文学部に進路を変更してこの先生から学べることは全部学ぼうと思っていました。服作りの方を自分の力で自習しようとしたんです。
それともう一つ書いて置きたいのは、この頃引っ越しをしたことです。
これは隣の住人とのトラブルだったんですが、私がうるさいと苦情を受けたんです。
そりゃそうです。昼夜逆転してたし、唄を歌ったりしてましたから。
今思えば私が悪いなって思うんですけど…
でも逆隣(ぎゃくどなり)の人は優しかったし、上に住んでる慶応大の兄ちゃんとも仲が良くって階段で一度ワインを開けて朝まで語り明かしたこともあったくらいです。
この頃は人に興味があって見ず知らずの人とも仲良くなるくらい、積極的でした。
でも一度、敵意(てきい)もたれてしまうと本当に厄介(やっかい)で、朝5時におまえ皿洗ってたろとか、片やその隣の住人はダメなのに犬を飼ってて壁(かべ)掻(か)いたりしてうるさいことはあっちにだってあったんですけど、付きまとわれるようになって無視してたらある日、私が買い物から帰ると私の部屋の前を頑(がん)として動かないんですね。
買い物袋を置いて、散歩に行ってしまおうとすると追いかけられて肩掴(つか)まれて殴られました。
2回も…
お前の所為(せい)で不眠症で病院通ってんだぞみたいなこと言ってて、埒(らち)が明(あ)かないから管理人さんに相談に行きました。私は殴り返したりしてないですよ。
管理人さん曰く、どっちの肩も持てない。だったんですが私が引っ越すことになったんです。
母がインターネットで探したという目黒にある物件に越すことになったんですが、もっと壁が薄くて、曰く付きの物件を掴まされたって感じでした。
でも、そんなに予算もないので、我慢して住むことになります。
間取りは1Kで目黒で5万円とかだったんで破格ですよね。でも安アパートは安アパートなりにやっぱり住まない方がよかった所だったんです。隣にはシャブ中のお兄さん、反対側のお兄さんはベランダが繋がってる外に小便垂れるし、向かいには足の悪いオジさんがいて買い物手伝ったりすることもありました。
川の近くも離れることになったし、風呂無しでシャワーボックスはあったんですけど寒い寒い。
でも大学まで自転車で通えるようになったんで、通学は楽になったんです。
まぁ、この部屋でも思い出すのはガラス伝いに見える明かりを見ながら泣いた事とか天井眺めてタバコふかしてた事とか、あんまりいい思い出じゃないです。
それから私の部屋選びは絶対に2階の角部屋が一番だという結論に至ります。
これから新生活を迎える学生のみなさん。6軒立てのアパートの1階の真ん中はどの物件でも辞めた方がいいですよ。
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