大学時代7 2014-01-30

 ポストカードにはこう書かれていました。


 私には彼氏が居るし、あなたとは付き合えないけど、それでも手紙は嬉しかった。


 コートを作るってはしゃいでくれたことも嬉しかった。


 あなたの気持ちにケリがつくならコート作り頑張ってね。(頑張らなくてもいいよ)


 女の子にはもっと積極的にね。あなたの未来には夢も恋ももっともっと大きなことが待っています。これからもよろしくね。



 みたいな感じです。これもまた実家に写真と一緒に後生大切に持っていますが今は思い出して書いています。



 想いは叶わなかったけど、コートが出来上がらないことも気に留めてないし私の恋心は素直に嬉しいと書いてあったんです。


 そりゃ、少し切なかったけれど、分かりきってる結果でした。


 それよりも何よりも返事がもらえたことが嬉しかったし、好きだって書いてあったのは嬉しかったと返事してくれたんです。それが何より嬉しかったです。



 彼女とはもう、授業の合間にすれ違って挨拶するくらいの関係でしかなかったです。


 私が手紙を書くのは彼女の日常に少しでも花を添えたいからでした。



 授業は好きな科目と嫌いな科目がはっきり別れて、この頃になると自論のようなものも増えて来て、変にプライドみたいなものも出来ました。


 けれど、頭の中は彼女の事でいっぱいで、正直、熱心に授業に取り組むようにはならなかったです。それより何より、自分でネタ帳みたいなのを持ち歩いてスケッチしたり、メモしたり、声をかけて写真を撮らせてもらったり、その服はどこで買ったの?とかインタビューしたり、自発的にデザイン活動の真似事(まねごと)のような事を始めていて、そっちの方が大事だったし、役に立つと思っていたし頑張っていたことと言えば、それくらいですかね。


 成績は悪かったのとなんてことなく良い成績取れたりするのと2極化でした。


 でも、総じて悪かったです。



 文化祭が迫ってくると、私はサークルで活動していなかったのですが委員会の方の手伝いを、委員会に在籍してはいないんですがボランティアで手伝うようになります。


 これで自治会の人たちと仲良くなったりもしました。


 それで、体育館で設営作業をしている時でした。



 彼女の方から私を呼び止めて、携帯どうしたの?と、あぁ今持ってないんだ。と言って、去年使った化粧道具よかったら貸してくれない?と頼まれました。


 彼女は去年の文化祭の参加ですごく貴重な経験ができて良かった。ありがとう。と言ってくれてました。今年は自分たちでグループを作って文化祭の出し物のファッションショーに参加するそうなのです。



 それで、私は当日朝早くに新宿まで行って、マツモトキヨシでお化粧のパフを買って急いで、彼女のグループに届けました。パフを買うか、買わないかで迷ったあげくギリギリになって買いに行ったのです。



 はい、と渡してすぐに立ち去りました。もう、準備の真っ只中で、彼女も忙しそうに受け取るだけでした。



 私は彼女たちの制作したファッションショーを一人で見て、投票用紙に彼女たちが1番になるように投票しました。結果、見事(みごと)彼女たちは優勝したんです。



 でも、文化祭自体は14と一緒に回ってました。14とは一緒に〇〇部のショーを鑑賞しました。金魚のふんみたいに私がくっついて歩いてて14にもその頃はもう大学内に彼氏がいたりして、鉢合わせて気まずい思いしたりして…まぁそんなこともありました。



 文化祭が終わって、彼女は1番になれたよって私に報告してくれました。


 良かったねって言って、彼女に貸してた道具を返してもらって、結局は使わなかったみたいだったけど、私はずっと14と居たから彼女に少し後ろめたい気持ちもありました。



 この頃、彼女に手紙の返事がまた欲しいと我が儘(わがまま)を書いてしまっていました。


 文化祭が終わって通常の授業が始まった頃、私を呼び止めて、ロッカーの前で


 ちゃんとした手紙を渡されました。


 経済の授業のノートを交換した時にもらったルーズリーフでの手紙も含めて彼女からは3通の手紙を書いてもらったことになります。


 嬉しくて嬉しくて、でも、汚れた過去も私にはあって、今まで潔白の身の上でいたらどんなにか良かっただろうと後悔もしました。



 でも、その手紙は1ページ目は途中まで書いてあって消された跡(あと)が残っていて、都合3枚もの長い手紙でした。



 私の出していた手紙に全部答えてくれているような内容でした。


 私が書いた自作の詩も良かったと書いてくれたし、涙が出るほど嬉しかったよと


 その一言で私は救われました。私の恋は報われたんです。


 これで終わっておけば、とってもいい思い出になるはずでした。


 でも、その後(ご)も私は彼女への気持ちを抑えることはできなくて彼女は私でなく彼氏をとることを伝えてくれてはいたのに手紙を書き続けてしまいます。無論、彼女は喜んでくれてました。


 ただ、私はこの袋小路(ふくろこうじ)からずっと抜け出せなくなってしまいます。



 その年のクリスマスは忘れられません。


 彼女に内緒でプレゼントを用意していました。


 でも、この場合少し難しい選択でした。コンビニ本かなんかを読んで、形に残らないプレゼントが一番喜ばれると書いてあったので、使えばなくなるものを選びました。



 でも気持ちは最上級で伝えたい。そこでバーニーズ・ニューヨークでサンタ・マリア・ノヴェッラのローズウォーターを購(あがな)い、綺麗にラッピングしてもらって本当のクリスマスは彼と予定があるだろうから、それより少し前に届けに行きました。



 彼女は思ったより驚いてくれたし、喜んでくれました。


 私の目の前でプレゼントを開けてくれて、これなぁに?っとローズウォーターだよ。香水にしたってお風呂に入れたっていいんだ。何にでも使えるんだよって言うと、彼女の笑顔は満開に咲きました。



 彼女を一番に喜ばせられた、私が生きて来た中で最高の場面でした。



 彼女は私の青春そのもので、この時が最高に華やいだ時期だったんです。



 それでも、終わりは近づきます。私が悪かったんです。


 この頃の笑顔が今でも忘れられないです。私の人生の永遠(えいえん)なる一部でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る