大学時代6 2014-01-28

 さて、大学生活も2年生に突入します。


 相変わらず、成績は芳(かんば)しくなく、特に実技の服飾制作では期限通りに提出できた試しがありませんでした。しかし、自由な校風で、まだ共学化されたばかりということもあって大学に毎日来て出席していれば、留年ということはなく、私も進級はできました。


 取れてない単位なんかもありましたけど、4年間で取ればいいのでとりあえず進級です。



 2年生になっても彼女との関係に変わりはありませんでした。


 ただ、私はその頃、彼女の携帯番号を見つめては電話かけてみたい、メール送りたいという衝動に駆られたので、覚えてしまう前に彼女のアドレスを削除してしまいます。


 そうすると、他の人のアドレスもどうしようもなく思い、全部削除してしまいます。


 結果、携帯を一時期持たない時期がありました。



 真っ正面からぶつかって、この口で愛を伝えるなんて事できやしなかったのです。


 私はあまりに小さくて、彼女はあまりに大きな存在でした。


 最初からこの恋は消極的だったんですね。


 どこかに実の結ばれない結果を予感しながら、彼女の笑顔に一喜一憂するような恋でした。



 だからロッカーに最初は友達を装って、とりとめのないことから手紙を書くようになったんですかね。携帯を手放したりしなければメールでの返事もあったかもしれないのに…


 まぁ今思っても後(あと)の祭りですね。



 それ以外ではいつもO君とつるんでました。


 O君家で映画を一緒に見るんです。主にヨーロッパの監督の作品なんかをレンタルしてきて、3本くらい続けて見ることもありました。


 一緒に夜を明かして、好きな女の子の話から最近のテレビの話まで、なんでも話しました。


 O君と居ると、話が尽きませんでしたし、普段から思ってること考えてることが似てて共感できることも多かったです。また、O君がどうも私というあまり今までに居なかったタイプの人物をかなり贔屓目(ひいきめ)で評価してくれていて、私の考えてることとか言葉を率直に聞きたいという、向きもありました。


 考えが合わないなら合わないなりに、O君となら延々と話し合うことができたんです。



 それと、タバコを覚えました。5月8日が誕生日なんですが2年生になってすぐでした。なんてことない、周りに居る人が多くタバコを吸ってたからそこに馴染みたいとか、一緒に悪い事したいっていうガキっぽい好奇心で吸い始めました。



 今考えても粋なんですが、私が好きなデザイナーがヨウジヤマモトだと知ってて初めて吸うタバコを選んでくれたH6君はおまえはこれだよってhiliteを即選んでくれたことですね。ヨウジさんがhiliteを吸ってるって知ったのは随分(ずいぶん)後(あと)になってからでした。


 H6君たちにはそんなこと常識だったんですかね?今考えても粋な計らいでした。



 タバコの開け方から吸い方から全部H6君が教えてくれてH6君のジッポでいつもの喫煙所仲間たちが私のデビューを見守ってくれました。


 全然吸えてないよと、突っ込まれながらも、これを機にまた交友関係が広くなります。クラス外の人とも戯(たわむ)れに声を掛け合えるようになってますます、大学生活が楽しいものになって行くんです。



 中学高校では味わえないような一体感でした。


 私にも友人関係が充実した時期はあったんです。これがあったか無かったかは随分(ずいぶん)と私の性格を温和なものに変えてくれる手助けになったことでしょう。


 O君とはいつもお揃いのタバコにしたりして、フィリップ・モリスのロングの3を吸ってました。


 パッケージが変わる前の奴です。


 なかなか置いてる自販機がなくて、珍しかったのとパッケージが格好良かったのが決め手だったんですね。


 一緒にコンビニ飯食って、映画見て夜中まで語らって…


 同性異性に関わらず、同じ時を共有した時間が一番長かった人がO君でした。


 その後(ご)、後(あと)にも先にもこんだけ私と一緒にいてくれた人は居ませんでした。


 親友は仙台に二人居るはずでした。でもO君が一番一緒にいて楽で、楽しい相手でした。


 O君も地元にそういう奴はおるよって言ってましたけど東京で出会った二人の友情も、十分青春を彩ったステキな一コマです。



 O君はモテたんで、すぐに彼女ができました。


 この頃にはもう付き合って1年経ってたわけですがO君はバイトも始めだして、大学に来なくなることもこの頃から目立って来たんです。なんか悩んでるような節もありましたが悩みを相談されたわけじゃなく、O君の彼女が言うには家では普通だよって言ってましたっけ。



 O君に影響されたわけじゃありませんが心理学のH7先生が大学生ならバイトしないとねって言ってたのを気に留めて大学も慣れて来たしと私もバイトを始めます。



 最初は虎ノ門にあるセブンイレブンでした。


 でも大学の授業とバイトの掛け持ちはすごく大変でした。


 店長が自衛隊に昔いた人で、私の肩なんかを抱いて来た時がなんかセクハラっぽくて3日で、泣いてすいません辞めますと電話越しに断ったのを今でも覚えてます。


 昔は痩せてたし、可愛げがあったんですかね?私にも…(笑)



 それと、2年生になって掛け持ちしてたサークルを全て辞めました。


 ファッションショーを企画する〇〇部もです。


 それは1年生で関わった男子が全員辞めたからでした。


 女子と話し合って企画するという事がこの頃の私たちには少し苦痛だったんです。


 なんにでも可愛いという言葉を連呼する女子の感覚がわからなかったっていうか女の子ってこうなんだなぁと、随分(ずいぶん)理解が深まった事は事実ですがみんながもうやらないと辞める手前、一人残って続ける自信はなかったんです。


 ゼロから全て自分たちで決められるんだよと先輩も引き止めてくれましたが私も辞めました。



 この頃はO君ら友人とタバコを吸ってつるむのが一番楽しかったんです。


 2年生の前半は、遅れた授業を取り返すのと、彼女に手紙を渡すので精一杯でした。


 O君と遊んだりもしてましたが、すぐに夏休みまで話は進みます。



 私は堪(こら)えきれなくなって胸の内を全て彼女に打ち明けました。


 すると、夏休みが終わって、彼女から1通の返事がもらえたんです。


 古いミシンの写真のポストカードの裏にびっしりと返事が書いてありました。

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