第5話

込み上げてくるものがある。

抑えながら、眠っていたときの、切れ切れに耳に入ってきた言葉が想起される。


今日も、おはよう。


顔色がいいね。


体調、回復してきてるね。


じゃあ、食事にしよう。


風が気持ちいいね。


今日も天気がいいよ。


元気になったら、二人でお外でお散歩したり景色を見れたらいいな。

霞む大気の向こうには鮮やかな蒼い蝶が乱れ飛ぶの。

朝を待って。

一緒にずっと見たいな…

そして最後には。


自己犠牲でかえりみることなく大杉の命を助けた。


命尽きるその直前まで、これっぽっちも恨んでもいなかった。

…!

アタマの中が、ズキズキする。

ああ。

あああああっ。

あああああああああああああああああああああああああああ!

声とも音とも取れる叫びのような音が口から裂けて、割れて、破れて放出される。

はあはあはあはあ。

はあはあはあはあはあ。

はあはあはあはあはあはあ。

ぜいぜい、ぜいぜい、ひゅーぅ。

一通り吐き出して落ち着くと、おもむろにのろのろと扉をあけて外に出た。

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