第6話
かつて見た、どのような地からもかけ離れた見晴らし。言葉で表そうとするととたんにその言外にするりと抜けだしてしまう、想像の追いつかない、絶後の大地が終わることなくどこまでも広がる。
このような場所があったのか。
そして食べられてゆく異形たち。
抵抗することなく。
ただ食べられている。
なんて神は無慈悲なんだ。
1人だけじゃなかったのか。
何かが湧き上がって来ようとしていた。
神の人喰い顔を避けながら一番大きな建物を目指す。
見るのも憚れる存在がいた。
愛があるから見れる、と頭に言い聞かせた。
異形は不意の訪問にも機嫌を損ねることなく。
微笑みを持って迎えてくれた。
そんなことはどうでもいい。
「戦うんだ、あいつらと」
困った顔をする。
「出来ません」
「戦え」
「無理です」
微笑みの困り顔のまま。
「わかりました。わたくしが犠牲になりましょう。神よ!わたくしは取りまとめ役のゔぁいぃー!我を贄として怒りを鎮めたまえ!」
「お、おい」
ごあっ。
壁を超えて来迎した顔が食いちぎった。
何事もなかったように虚空に消え去る。
あっけにとられる。
どうして。
愛があるにも程があるのではないのか。
どうして。
どうすれば。
その場に立ち尽くして。
あたりをぼうっと見続けて。
見続けて。
ぼうとしたそのただなかに。
愛だろうか。
光が生まれた。
闇も生まれた。
これは怒りだ。
ガラス越しの怒りが業火のような勢いを見せて、大杉を焚きつける。
すべては、ここより始まる。
怒りは恐れ、不安の裏返し。
錬金術だったのだ。
原初の衝動に身を任せよ。
そのまま叩きつけるように、あらわしだせ。
体が欲している。
飲み干さんばかりの、どす黒い暗黒を。
それとともに。
さきほどの、一粒ばかりの光も我が身の中で輝きを増す。
光は、ただあるだけだ。
ただあるだけで。
道筋を照らす道標となる。
あることが閃いた。
しかし。
本当にそうなるのか。
本当に許されるのか。
それでも。
やらなければ。
対岸の怒りも後押ししているのだから。
どちらも私だ。
駆け出し、翼持つ異形の元へと向かった。
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