第3話

何が起こるというのか。

それまでの間、いくつかわかったことがある。

まず大杉は複雑骨折した状態で倒れていたこと。

これはあの扉がこちらでは高いところにあるからだろう。

こちらに出て落ちる際にバタンと閉じる音も聞いている。

壊れていないのか、あの扉。

次に、食べるもの。

カデリだった。

比喩でも冗談でもなく、カデリの一部をちぎって食べさせてくれていたのだ。

どうやらここの者は故意に殺すことがない。というか、愛のみで生きている。

だから犯罪もない。

楽園。天国。

そのことさえなければ、ここは優しい世界なのだろう。それと、不慮の事故で死んでしまうのを除けば。

そのこと。


最初は地割れの音かと思った。

バキバキバキと空間が裂けていく。

大きな顔だ。顔のみ。

美女神のかんばせ。

何処かの神話の一柱だろうか。

威厳を持ち、慈愛に満ち溢れている。

その御面が。

大杉をパクッと食べようとした。

「危ない!」

カデリが庇い、半身を持っていかれる。

ちっ。

心底悔しそうな美女神の顔。

そのまますーぅっと空間を閉じてゆく。

あとには。

大杉と死にかけのカデリが残った。

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