第5話 失われた記憶
「嘘でしょ…」
「あれ?ゆいゆいとまいまいまだ来てないの?」
「あぁ。まだ来てない」
「今日は仕事無いって言ってたけど…なんかあったのかな」
「あっ!!まいまいから電話だ!!…もしもしるかだよ。まいまいどうかしたの?…えっゆいゆいに何かあったの?…うん。わかったすぐ行くね」
「どうかしたの?」
「うーん…るかもよくわかんないけど、ゆいゆいになんかあったみたい…とりあえず、二人の家に行こう!!」
「勝手に入っていいのか?」
「うん。さっき電話終わった後、まいまいがドア開いてるから入ってきていいって連絡来て…えっと…二階の部屋にいるって」
「優衣ちゃん…なんで…」
「まいまい!!来たよ。あれ?ゆいゆいは?」
「それが…朝、優衣ちゃんを起こしに行ったら…」
「優衣ちゃん朝だよ‼起きて‼」
「ん~もう朝…」
「優衣ちゃん‼おはよう」
「……。誰ですか?」
「えっ」
「それで私、気を失ってたみたいで…優衣ちゃんいなくて…」
「じゃあゆいゆいいなくなっちゃったの?」
「たぶん…。優衣ちゃんどこ行っちゃったんだろう」
「それも大事だと思うけど…新城さんのこと誰って言ったのも問題だと思うけど…」
「確かに…ゆいゆいどうしちゃったんだろう…」
「まぁ見つけて話せば分かるだろ」
「うーんとりあえずどこから探す?」
「そういえば新城さんもあれできるんだよね?あのー感じ取るやつ。あれでどこにいるかわからないの?」
「できるけど…もう少し心を落ち着かせる時間がほしい…」
「そうか。まぁとりあえず、学校に行ってるかもしれないから、先生に連絡してみるか」
「じゃあ僕が連絡するよ」
「学校には来ていないみたいだよ」
「そう。でも大丈夫。とりあえず落ち着いたから今なら優衣ちゃんのいるとこわかるかも」
「ほんと⁉」
「うん。優衣ちゃんこっちにいる」
「優衣ちゃん‼」
「…誰ですか…?」
「えっ…優衣ちゃん…何、言ってるの?私だよ!!真衣だよ…なんで…誰なんて言うの…どうして…」
「ゆいゆい、まいまいのこと忘れちゃったの…?」
「本当に忘れたのか?新城はお前に大切な友達だろ。そんな簡単に忘れるものなのか?」
「…あの、私の友達は…るかさんです。その人じゃなくて…」
「えっ…嘘…いや、そんなの…嫌…!!」
「まいまい!!…るか、まいまいのところ行ってくる!!みんなは、ゆいゆいのことお願い!!」
「うん。任せて」
ゆいゆい…。
いったいどうしちゃったんだろう…。
「とりあえず、学校行くか」
「そうだね」
「ねぇ新崎さん。本当に新城さんのこと忘れちゃったの?」
「えっと…その、ごめんなさい。覚えてないというよりかは…その、私あの人に今日初めて会ったんですけど…」
「えっ…」
「新崎さん、簡単にでいいから、るかに出会うまでの事話してみてくれる?」
「はい。えっと…小さいころに両親を亡くしてからずっと一人で友達とかいなくて…それで、力に目覚めて、戦い始めて、るかさんと出会ってお友達になって…」
「んーこれは記憶喪失というよりは記憶が別のものに書き換えられてるね」
「記憶が書き換えられてる?」
「うん。本来なら、幼いころからずっと新城さんといたはずでしょ?そして、新崎さんにとって、とっても大切な友達のはずだ。でも、今の新崎さんにとっての友達は、るかだし、昔は一人でいたことになってる。つまり、新城さんを忘れたんじゃなくて、新城さんと出会ってないことになってる」
「なるほど!!」
「でも、なんで急に…」
「やぁ。俺の用意したものは楽しんでくれてるかな?」
「お前は…エル!!」
「どうやら楽しんでくれてるみたいだねよかった」
あとは仕上げをするだけだ。
これできっと…。
「お前が記憶を書き換えたのか?」
「そうだよ。僕の目的のためだからね」
「目的?お前の目的は、世界を滅ぼすことじゃないのか?」
「さぁそれはどうかな。君たちに僕の目的を教えるわけないでしょ。まぁいいや。君たちの相手はこの子にしてもらう。せいぜい頑張ってね」
「あのクロ前に出てきたやつに似てない?」
「前ってあれか?新城の…」
「そうそう。でも、前のよりの何か禍々しい気がする…」
「とにかく倒すよ」
「まいまい!!待って!!」
「嫌…。なんで…どうして…」
「まいまい…」
「優衣ちゃんが私のこと忘れるならいいの。思い出してもらえればいいし、これからいっぱい思い出つくればいいし…でも…でも、友達じゃないは、しんどいよ…つらいよ」
「るか!!今クロと戦ってる。こいつが、前のやつより強くて全員やばい状況だ。すぐ来てくれ」
「まいまい。今の聞いた?全員ってことはゆいゆいも危ないってことだよ。いいの?行かなくて。約束したんでしょ?ゆいゆいのこと守るって約束したんでしょ?それを守らなくていいの?るかなら何があっても行くよ」
まずいな。
このままじゃ、全員…。
やばい…。あのクロ、よりによって今一番、キツイ、新崎のところ行きやがった。
クソ…。ここからじゃ間に合わない…。
どうしよう…。
もう動けない…。
助けて…。誰か…。
「優衣ちゃんに触らないで―!!」
私を襲おうとしていたクロを、あの子が吹き飛ばした。
「どうして…。私あなたを傷つけたのに…」
「そんなの決まってるでしょ!!私、約束したから。何があっても優衣ちゃんを守るって…一緒にいるって…だから、たとえ優衣ちゃんに忘れられても私は何度でも立ち上がるよ!!私、優衣ちゃんのこと大好きだから」
だめだ…。
うまく戦えない。
でも、優衣ちゃんを守らないと…。
いいねいいね。
順調順調。
ショックからまだ完全に立ち直れてない。
このままいけば…。
このままじゃ…。
あの子が…。
どうしよう。
やだ…。一人に…しないで…。
行かないで…。守らなきゃ…。
あの子を…。
私の大切な友達…真衣ちゃんを…。
「真衣ちゃんに触らないで―!!」
私が戦っていたはずのクロが、炎に包まれて消えた。
「優衣ちゃん…今、真衣ちゃんって…」
「真衣ちゃんごめんね。私真衣ちゃんの事…傷つけちゃった…」
「ううん。私のこと、思い出してくれただけでうれしいよ。守ってくれてありがとう…」
「私のほうこそ、守ってくれてありがとう」
ここは…。
そうか。私はあの時…。
無事に闇の手からは逃れたようだが…。
いや、どうやらまだのようだ。
私を求める闇の手がもうすぐそこまで来ている。
何とかしなくては…。
よし。
やっとだ。ようやくこの時が来た。
アル…もうすぐだよ…。
もうすぐで、ずっと一緒にいられる。
待っててね。アル。
俺の大切なアル…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます