第4話 知らない感情
〖ねぇ一人になる気分はどう?あの子にほっとかれて一人になる気分はどう?〗
〖誰…?〗
〖俺のこと忘れちゃったの?俺だよ。エルだよ〗
〖どうして私があなたと会話を…?〗
〖俺が君の夢の中に入り込んだからだよ。ねぇそんなことよりさ、俺の質問に答えてよ〗
〖そんなこと言われても…。私一人になんてなってない〗
〖へぇもうとっくに感じ取ってるのかと思ってたけど…あっ、それとも気づかないふりしてるの?〗
〖何の話?よくわからない…〗
〖ふーん…君、自分にも他人にも嘘つくの上手だね。僕にはわかるよ。君の心に生まれた闇が…〗
君の心に生まれた闇…。
存分に使わせてもらうよ。
「優衣ちゃん!!起きて!!遅刻しちゃうよ」
「ん~真衣ちゃん…おはよう…」
「おはよう優衣ちゃん。今日は、ちょっとお寝坊さんだね。それにちょっと顔色が悪いよ?大丈夫?」
「平気だよ。心配してくれてくれてありがとう」
私が一人なんてそんなのありえない。
だって、私のそばには、いつも真衣ちゃんがいる。
一緒にいてくれる。
〖君は一人だ〗
違う。
〖君は見捨てられたんだよ。いつもあの子に頼ってばっかりで、自分ひとりじゃ何もできない。そんな君のそばにいるのがつらくなったんだ。だから、あの子は君から離れるようになった。最近君のそばには、あの子はいない。君は、あの子が何をしているか知っているの?〗
それは…。
でも、きっと…とっても大切なことのはず…。
〖本当にそうかな?君以外の誰かと仲良くなってるかもしれないよ?〗
そんなことない…。
真衣ちゃんがそんなことするわけない。
ずっと私と一緒にいてくれるって言ってたのにそんなことありえない…。
〖ふーんじゃあ確かめてみれば?〗
真衣ちゃん…。
たぶんこっちにいる。
あっいた。
先生とお話してるだけみたい。
よかった。
でも、どうして私と一緒じゃだめなんだろう…?
私に聞かれたくない話ってことだよね…。
うぅ…。気になる。
あっまた誰かと話してる。
あれは…制服着てるってことは、生徒さん…だよね。
何の話してるんだろう…。
もしかして…私以外のお友達…。
そんなはずは…。
この時私の頭にエルの言葉が浮かんできた。
〖いつもあの子に頼ってばっかりで、自分ひとりじゃ何もできない〗
一人じゃ何もできない…。真衣ちゃんに頼ってばっかり…。
あの日からそうだった。不安で、苦しかったとき、真衣ちゃんがそばにいてくれた。だから、私はずっと真衣ちゃんにそばにいてほしかった。だから、真衣ちゃんを何度か、守ることができた。でも、普段の戦いでは、私はそんなに戦えない。真衣ちゃんがそばにいないと何もできない。
嫌だよ…。もう、一人になりたくないよ…。
真衣ちゃん…私…私―。
「おい、新崎こんなところで何やってるんだ?」
「嫌!!」
「おい!!新崎!!」
新海が、優衣ちゃんを呼ぶ声が聞こえてきた。
「先生ごめんなさい。私行かなきゃ」
「えっ。あっ、おい新城!!」
「新城さん急にどうしたんでしょう?」
「さぁ…でも一つ言えるのは、どんなことよりも大事なことなんだろ」
「新海!!優衣ちゃんがどうかしたの?あんたが、優衣ちゃんのこと呼ぶ声が聞こえたんだけど」
「話しかけたら、急に、嫌って言ってそのままどっか行った。そういや、泣いてた気がするけど」
「そう。ありがと。私、優衣ちゃんを追いかけてくる」
「あぁ。気をつけろよって聞く前にどっか行ってるし…」
そういやあの二人が一緒にいないの珍しいな。
一応心配だから俺も追いかけるか。
あいつらにも連絡しておこう。
真衣ちゃん…。
「やあ」
「あなたは…エル…」
「今君には、今まで感じたことのない感情があるはずだ。まあ当然だよね。今まであの子がそばにいたんだから、そんな感情が生まれる要素なんてなかった。でも、君のあの子に対する良い感情でいっぱいの君の心に、ほんの少しの闇ができた。君の感情思う存分使わせてもらうよ。さぁ闇の檻に閉じ込めてあげるよ。永遠に真っ暗闇の中、一人で生きるといいさ。一人ぼっちの君は、僕と同じだ」
気が付くと、私は、一人だった。
周りには何もなく、ただ真っ暗闇の中私がいるだけだった。
私、ほんとに一人になっちゃった…。
私このままずっと一人なのかな。
でも、それでいいのかも。
だってこんな私のそばに、真衣ちゃんはいてくれない。
真衣ちゃんのそばには、私みたいな人じゃなくてもっとほかの…真衣ちゃんがいなくても、一人でも大丈夫な子のほうがきっと…。
真衣ちゃんの気配をたどって来てみたら、そこには、エルがいた。
そして、エルの後ろには、檻があった。
檻の向こう側は何もなかった。
でも、檻のほうから、優衣ちゃんの気配がする…。
「エル!!優衣ちゃんに何をしたの…!!」
「俺は別に何もしてないよ。どっちかっていうと、あの子をこの檻に閉じ込めたのは、君のほうでしょ」
「えっ…。それってどいう…」
「そのままの意味だよ。君が彼女の心に闇をつくった。ひどい人間だよ君は。僕は君みたいな人間が大嫌いだ。あの子が可哀想だ。こんな檻に閉じ込められちゃってさ、君があの子にひどいことをしなければこんなことにはならなかったのにね」
「私が、優衣ちゃんを…そんな…」
「まいまい!!大丈夫?」
「私は大丈夫だけど…あの中に優衣ちゃんが…」
「まじかよ…」
「あれ、どうやって助けるの…?」
「はぁ…。ほんと君たちって邪魔だよね。俺は二人に用があるだけなのになんでいつも邪魔してくるのかな…。君たちには、彼女を助けることはできないよ。彼女を助けられるのは、新城真衣、君だけだ。その前に、邪魔な君たちをどうにかしないとね。本当は、もうちょっと溜めたかったけどまぁ仕方ない」
「何あのクロ…。何かいつもよりも禍々しい…。」
「そりゃそうさ。このクロは、今までのとは違う。これは、新崎優衣の感情から作り出したクロだ。今まで、彼女に生まれたことのない負の感情からね。今までは彼女の心は新城真衣への好きの気持ちしかなかった。でも、君があの子を傷つけたことによって生まれたんだよ。今はまだ小さい闇だけど、時間が経てばドンドン大きくなる。そして、いつか彼女の心は闇に染まる。彼女の闇は小さいけどとっても深い闇だ。そんな闇から作ったクロはいままでのやつよりもずっと強い。君たち邪魔者の相手はこの子に任せるよ。それから、早くしないと、あの子ホントに闇に飲み込まれちゃうよ。せいぜい頑張ってね」
「とりあえず、あのクロの相手は俺たちにませろ。お前は新崎を助けに行け」
「うんうん!!るかたちは大丈夫だから早くゆいゆいのところに行って!!まいまいなら絶対助けられるよ!!」
「わかった。みんなありがとう」
とりあえず、檻の前まで来たけど、どうやって中に入れば…。
悩んでる暇なんてない。
早く優衣ちゃんのところへ…。行かなきゃ…!!
気が付くと私の周りは真っ暗闇に包まれていた。
あの檻の中に入ってこられたってことだよね。
優衣ちゃんどこにいるんだろう。
だめだ。ここじゃ前みたいに優衣ちゃんの気配を感じられない。
とにかく、歩き回ってみよう。
優衣ちゃんの中に生まれた、負の感情って何なんだろう…。
あの時、優衣ちゃんの中にあった感情と違うってことだよね。
それに、私のせいで生まれたってことは…。
最近の私の行動を振り返ればわかるはず…。
そっか…。やっとわかった。私なんで気が付かなかったんだろう…。
あっ…!!今、優衣ちゃんの気配をちょっとだけだけど感じた。あっちだ。
なんかどんどん闇が深くなってる気がする…。
こっちのほうから気配を感じたってことは、早くしないと優衣ちゃん闇に飲み込まれちゃう…。
「優衣ちゃん!!よかった。やっと見つけられた」
「真衣ちゃん…」
「優衣ちゃん、ごめんね。私優衣ちゃんのこと傷つけてた。それなのに全然気が付かなくて…私ホント最低…」
「真衣ちゃん…私…私―寂しかった…」
「うん。ちゃんとわかってるよ。ほんとにごめんね。私強くなりたかったの。優衣ちゃんを守りたくて…。こないだ、優衣ちゃん、私のこと守ってくれたでしょ?もう戦えないってくらいボロボロだったのに、私のこと守ってくれたでしょ。だから、私、優衣ちゃんに守られてるだけじゃだめだと思って、強くなろうと思って、先生に特訓をお願いしてたの。それでほかの人とも一緒にやってて、でも、友達じゃないよ。だって私の友達は優衣ちゃんだけだもん。私も、優衣ちゃんと離れるのは、しんどかったけど…優衣ちゃんを守るためだって仕方ないって我慢してた…。でも、もうやめる。優衣ちゃんを傷つけてまで強くなりたいと思わない。だから、もう悲しまないで。ずっと一緒にいるから…」
「でも、私ひとりじゃ何もできないし、真衣ちゃんに頼ってばっかりだし…これからも、真衣ちゃんにいっぱい迷惑かけちゃうかもしれないよ?それでも…こんな私でも、一緒にいてくれる?」
「うん。ずっと一緒にいるって約束したから…。それに迷惑だなんて思ったことないよ。だからこんな私なんて言わないで…」
「真衣ちゃん…。ほんとに?ほんとにもう一人にしない?」
「うん。一緒にいる。絶対離れないから…」
「あっ!!ゆいゆいとまいまいだ!!良かった!!戻ってきた」
「二人とも無事でよかった」
「皆さん…えっと…色々とごめんなさい」
「謝らなくていいよ!!ゆいゆいが戻ってきてくれただけでるかたち嬉しいから」
よし。順調に覚醒度が上がってる。
このままいけば、もうすぐ手に入る…。
アル…。もうすぐだよ。待ってて。
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