ホウキとチリ取り

 アングマール戦は人同士の戦争でもあるけど、神同士の戦争でもあるのよね。究極的には魔王を殺さないと決着が付かないってところなの。でもって神を殺せるのは神だけだから、コトリかユッキーが対決しなきゃならないんだけど、魔王は強い。ゲラスで見た魔王に勝てる気がせんかったのは白状しとく。


 まともに組み合ったら勝てそうにあらへん上に、ユッキーもそうやけどコトリも魔王には触れたくもないのよ。誰があんな変態チンポコ・エロ野郎と組みたいっていうのよ。触れただけでエロエロが感染してまいそうやんか。だいたいやね・・・


 悪口はこれぐらいにしとこ。これをやりだすと一時間ぐらいかかってまうからね。ユッキーに相談した時も、相談の大部分が悪口になってもて、なんにも話が出来へんかったもの。ホンマ、あのクソ野郎のことを考えるだけでムカッとするわ。あれだけエロしか頭にないのに、どこで戦争のことを考えてるんやろ。絶対頭やあらへん。チンポコで考えてるんやで。いやキンタマで考えてるに違いない。チンポコ以外でマシなとこ言うたら、キンタマぐらいしかあらへんやないか。


 チンポコ脳のキンタマ頭の歩くエロ人間・・・アカン、アカン、悪口ばっかりナンボでも浮かんでくる。これじゃ、考えが全然まとまらへんやんか。考えがまとまらへんのはキンタマ野郎が全部悪い。なんであんなエロしか頭にない奴があんなに強いねん。世の中、間違ってると思うでホンマ。


 ハア、ハア、ハア。今度こそ冷静に考えよ。とにかく女の敵、あんな楽しいことを使い捨てにしやがる感覚が信じられへん。あんなものん、何回も出来るから楽しいんやんか。それを一回ポッキリで使い捨てにしやがるんよ。毎晩一人ずつでも、一年したら三百六十人以上やん。


 アレはコトリも好きやけど、何回も肌を合わせて高めていくのがイイんじゃないの。そうやってお互いに感じるところが段々にわかっていって、どっちも満足していくものよ。まあ、コトリの場合は体が既に出来上がってるようなもんやから、一回目でも乱れちゃうけど、それでも一回目より二回目、二回目より三回目の方が楽しくなるんだよ。


 童貞相手の時だって面白いんだよ・・・アカン、アカン、また脱線してしもた。とりあえず問題点は、まともに組み合っても勝てへんのんと、クソ魔王を殺さんとコトリも餌食になってまう点やな。どっちもよく考えたら不利すぎる話ばっかりやけど、こればっかりは負けられへん。


 なんかエエ手はないかな。いっそのこと開き直って、ベッドでクソ魔王を搾り上げてまうってのどうやろ。神いうても人やから、一日に五十発ぐらい搾り上げたら倒せるんちゃうやろか。その間にコトリもエクスタシーに何回も達するだろうけど、どっちが最後まで生き残っているかみたいなサバイバル勝負。そんなんを一週間ぐらい続けたら、クソ魔王でも耐えられへんと思うけど、それをするのにコトリが耐えられへんわ。


 アレをやり続けるのはまだエエとしても、クソ魔王相手にやるのは虫酸が走り過ぎるもんな。やっぱりアレは愛する男とワクワクしてやるもので、商売でやるのはさすがに懲りた。この手はベッドまで追い込まれた時の奥の手にしとこ。まあ、最後の最後の土壇場勝負なった時に頑張るぐらいかな。


 そうなると神として戦わなしゃあないんやけど、条件厳しいな。何回も神と戦ったことあるけど、たしかにエネルギーの消耗戦やけど、感覚としてエネルギーの燃やしあいみたいなところがあるねんよ。神同士の戦いはシンプル過ぎるけど、あえてテクニック的なところは、相手のエネルギーをより効率よく燃やすはあると感じてるのよね。


 今までエレギオンに来やがった神は殆ど雑魚やったけど、雑魚相手に戦ったら、相手は瞬間に燃え上がる感覚は確かにあるのよ。これが雑魚よりマシのクラスになると、なんか燃えにくい感じがしてる。うん、ポイントはその辺にありそうな気がする。


 たぶんやけど、相手の神のエネルギーは、エネルギーの差があるほど早く燃え尽きるんちゃうやろか。相手より強いと言うのは、エネルギーの差やねんけど、エネルギーの差が大きいほど、自分のエネルギーの消耗が少なくて、相手が燃えやすいみたいな。でも、そうであってもコトリの不利は変わらないのよね。クソ魔王の方がどう見たってエネルギーは上だもの。


 なんかヒントはあらへんかな。弱い方が強い方のエネルギーを効率よく燃やす方法を考え出したら勝てるはず。まあ、そんなうまい手があれば誰でも使うんやろうけど、今回はそれを見つけ出さへんかったら、ベッドでの土壇場勝負に持ち込まれてまうやん。やっぱり魔王とアレするのは生理的に嫌やし。


 う~ん、う~ん、エネルギーの強弱を付けるには・・・こう考えたらどうやろ、エネルギーの強弱は持ってる分の差でもあるけど、出す時の差でもあるんちゃうやろか。どういうたらエエのかな、神のエネルギーいうても溜めてる分と使う分に違いがあるって感じ。もうちょっと言い換えれば、エネルギーからパワーは生まれるんだけど、エネルギーとパワーはちょっと違うって考え方。


 神同士の戦いってエネルギーの消耗戦ってなってるけど、本当はエネルギーを変換したパワーの対抗戦で、相手に対抗できるだけのパワーが出せなくなったら負けるぐらい。もうちょっと言い換えると、パワーはバリアみたいなもんで、これが突き破られれば持っているエネルギーも燃やされてオシマイになっちゃうぐらいかな。


 出せるパワーは持っているエネルギー量に比例するのだけど、ここで瞬間最大風速みたいな強力パワーを浴びせかければ、相手のパワーを吹き飛ばすだけじゃなく、蓄えているエネルギーも燃やせちゃうぐらいの戦術は成立するんじゃないかって。


 雑魚よりマシのクラスの神と戦ってる時にそんな感じがあってんよ。神同士の対決は純消耗戦やけど、それでも力の出し合いでの駆け引きは多少あるねん。これまでは相手がよりパワー懸けてきたら、こっちもパワーアップして対抗してただけやけど、だいぶ前に魔王より一万倍マシやったけど気色悪いのがいて、


「コイツ好かん」


 と思って、ドカンとパワー懸けたら瞬間で燃えたことがあるねん。あの感じの拡大版やったらクソ魔王にも通じる可能性があるかもしんない。そうなると問題はどうやってそんな瞬間最大風速みたいなパワーをかけれるかになってくるのよね。


 『コイツ好かん』程度じゃあかんやろな。それも出来たら、離れて当てたいところ。だってクソ魔王に触れたくあらへんし。でも出来そうな気がするのよ。女神は色んな能力が使えるけど、離れてても使えるの。災厄呪いなんてそうやんか、あれなんか隣の国でも効くのよ。


 ユッキーは色んな小技が使えるみたいだけど、コトリだって近いものは使えるの。ユッキーと大喧嘩したら神殿も壊れることがあるんだけど、あの喧嘩って物の投げ合いなのよ。だからエライ事になっちゃうのだけど、最初は手で投げ合うのだけど、ヒートアップしたら神の能力で投げつけあうの。


 備品がブンブン飛び交う世界になっちゃうんだけど、神殿まで壊れる時には、壁石や床石、さらには天井の梁まで投げつけあうから神殿が壊れちゃうの。ひどい時には完全に瓦礫の山になっちゃうから、侍女だって、女官だって喧嘩になれば絶対に近づかず逃げちゃうのよ。まともに当たれば死んじゃうものね。


 もっとも喧嘩したら女官長にごっつい怒られるの。これは思いっきり怒って良い事になってるの。首座や次座や女神でも一切逆らってはならないことになってて、延々と半日ぐらい説教されちゃうし、罰として一ヶ月ぐらいビールも取り上げられちゃうのよ。神殿ぶっ壊した時には一年間禁酒させられた。まあ、それぐらいのブレーキを作っとかなきゃ、エレギオンの街ごとぶっ壊す大喧嘩をやりかねないし。



 あれこれ考えたけど、ユッキーが言ってた小技は便利そうやからちょっと使ってみようかな。とりあえずホウキとチリ取りやってみよか。力の使い方はこんなもので、えっと、えっと、あれっ、アカンて、そんなんしたら、


『ボキッ』


 しもた、力加減が難しいなぁ。チリ取りも練習だけ、


『グシャ』


 微妙なもんやなぁ。でもどっちも壊してもたから明日は侍女に怒られるやろなぁ。でも、なんとなくわかった気がする。もうちょっと他のもので試してみるか。


『バキッ』


 ありゃ、また壊れてもた。じゃあ、こっちは、


『メキメキメキ、グシャ』

『バリバリバリ、グシャ』


 どうにも力加減が難しいわ。部屋の中がグシャグシャになってもた。こりゃ、拙い。朝になってから侍女がやってきて、


「次座の女神様、どういうおつもりですか。部屋中の物をこんなにしてしまって。そもそも女神の生活は国民のお手本。それをわかってやってらっしゃるのですか!」

「ゴメン、でもこれ軍事研究なの」

「それだったら部屋でやらないで下さい。ついでにいうと庭でもやらないで下さい」


 言う通りやと思た。この調子でやってたら、家ごと潰してしまいそうやもんね。演習場に行って練習しようっと。


「これはこれは次座の女神様、御視察ですか」

「う、うん。他にもちょっと・・・」


 なんにしようかな。とりあえずあのデッカイ岩にしよう。あれやったら壊しても文句でえへんやろ。


『ボロッ』


 岩って脆いなぁ。というかユッキーの言っていた岩を自由に加工できるって、この延長線上のものやろな。じゃあ運んだりはどうかだけど、


『ヒュウッ』


 うわぁ、飛んでってもた。まずい、あそこまで飛んだら演習中のまん中やんか。


『ドッカーン』


 四座の女神が飛んで来て、


「次座の女神様、お戯れは、ほどほどにお願いします」

「ゴメン」


 ユッキーのやつ、なんちゅう器用やねん。どうもコトリがやると操るというより、ぶっ壊すになってまうし、運ぶというより放り投げるになってまうやんか。他もやってみたけどエライ目に遭った。水を湧かせてみたら三十メートルぐらいの大噴水になってもてずぶ濡れになったし、食事の温度調節も少し熱くしようとしたら煮えたぎり、少し醒まそうと思ったら凍ってもた。


 部屋の温度調節もそうやった。灼熱と極寒の二段調節にしかならへんのよ。火をつけるのもそうで、危うくコトリが焼け死にそうになったもの。そやから人を自在にコントロールするとか、気候にまで手を出すのは今はまだやめてる。そんなんしたら、相手を殺しかねへんし、気候かってどうなってしまうのか想像するのも怖いぐらい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る