第13話 男は語る②

 男は続けて語る。

「緑の庭園のずっと奥には門があり、その先には入ることを禁止されている扉がありました。それは【時の狭間】と呼ばれる部屋で、高貴な方々から罪人が出た時に、そこに入れられると伝えられていました」


「そこは、もうはるか昔に忘れ去られて、使われる事もなくなった場所でしたから、人も寄り付かなくなっていました。周囲は鬱蒼うっそうとしており、門には蔓草つるくさが絡みついていたので、なおの事でした」


「よりによってそこに空色の鳥は飛んで来ました。そうして蔓草の絡まる門の内側に花冠を落として飛び去ってしまったのです」


「やっと姫が追いついた時には、鳥の姿は見えず、遥か遠くで美しいさえずりが聴こえているばかり。姫は泣きそうな思いで門の内側にある花冠を見つめました」


「何とかならないだろうかと門に手をかけた時、その下の目立たない場所に姫くらいの小ささなら辛うじて入り込めるくらいの隙間があるのを見つけたのです」


「姫は迷わずに隙間から中へと入りました。そして無事に花冠を手にしてホッとした時、その扉に気づいたのでした」

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