第28話 207号室 綿樫トメ

「石清水さん、ご飯ですよ。その前に口腔体操しますよ。来てください」

ドア🚪の入口から声をかけても、全く気にしていないようだ。そのすぐ側を、綿樫トメが通った。スリッパを「パタパタ」と言わせながら歩いていた。新島村と目👀と目👀が合った。


新島村の顔を見ると、「なあ、飴🍬ちゃんくれへん?」と綿樫トメが訊ねてきた。

「綿樫さん、もうすぐご飯ですから、飴🍭ちゃんは要りませんよ」

「あんたは、いらへんかもしれんけど、私は飴🍬ちゃんがいるんやがな」

綿樫の両膝🦵は少し変形しており、歩きにくそうだった。高齢のための変形のようだった。

「私、もう帰るわ」

「帰れませんよ」

そう新島村が答えると、驚きながら目👀を剥いた。

「ええっ!初めて訊いたわ」

「初めてではないですよ。何十回も言っていますよ」

「ええっ!そんな事ないでしょう。私、初めて訊いたわ。もうビックリ‼️」

居室のドア🚪のところで石清水の対応をしながら、綿樫の相手をするのはしんどいなと思っていた。


トメは、「私、6女やねん。女ばっかり。お父さんも男が欲しかったんやろうな。でも生まれてくるのは女の子ばっかり6人や。もう男の子は諦める。子供はもういらんというので、私の名前がトメになったんやで」というの定番の話を何度も聞いていた。

「綿樫さん、こっち座って」

そう立川に促され席に着いた。立川は、201号の谷河の起床介助にむかった。立川のナイスフォローに『ありがとう』と目👀くばせをした。石清水の居室内に入る。


「部屋の電気💡点けますよ」

居室内の電気💡を点けても、何の反応もなかった。一瞬、蝋人形🧸か?と疑った。

「石清水さん。ご飯🍚ですよ」

「おうー」

新島村の方を観ながら、テレビ📺に指を差した。トタン屋根が強風🌬️で飛ばされるシーンが映っていた。近付きつつあるニュースの台風🌀の影響を写し出していた。スタジオにいる司会者が、「そちらはどうですか?」と訊ねる。

鹿児島からマイクを持ちがら、現地レポーターが台風🌀上陸の現場の中継に出ていた。

「凄まじい風と雨です」

レポーターは、どんな気持ちで現場に出るのだろう。

「よっしゃあ!やったるでー!」と言う気持ちで中継に現場に向かうのかな?

「嫌やなー、台風🌀真っ最中になんで中継に出なくてはならないのか?」と思うのか、どちらだろう?

「周りの電線や、街路樹🌴が激しく左右に振られています」

レポーターは、合羽を着ながら風に飛ばされまいと抵抗しながら雨☔️の中、声を張り上げる。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る