第14話 201号室 谷河百合子

脳梗塞の後遺症で、右半身に麻痺が残り、ズボン👖と下着🩲を下ろすのが、1人ではうまくいかないとため、介助が必要だった。しかし、言葉の発語には問題は無かったが、半身麻痺の方は拘縮が始まっていた。


この施設に来た当初は、申し訳なく思い、なかなかナースコールを鳴らしてくれなかったらしい。居室でポータブルトイレ🚽に座る際は、決して1人では行わず、必ずナースコールを鳴らして欲しと何度か約束をして、守ってもらえるようになった。


谷河の記憶力に関して曖昧な所があり、思い違いのような事は見られるが、こうして欲しいという依頼は聞いてくれるので、比較的介助は楽なのかもしれない。


また谷河は、今でもナースコールの後、訪室すると伏目がちで、羞恥心と申し訳ないという気持ちがあるのか、「ごめんなさいね」とか、「ありがとうね」と、いつも介護職員に答えてくれて、とても謙虚な対応なので、いつも新島村も何か足りない所はないのかとサポートして上げたくなる。


どうしてもそこは人と人の対応なので、感情という物が介在してしまう。新島村も、自分がもしこの身体になってしまったとしたら、誰かのサポート無しではいられないだろう。そのサポートを当然とは思わずに感謝してくれる。


しかし不思議なのが、その家族👪だった。谷河百合子の介護には、娘の姉妹👭が関わっているのだが、とにかく介護職員に対して口👄うるさく、何かにつけて「母親の事をちゃんと介護して欲しい」という牽制なのか、「ベッドのシーツ交換はいつなのか?」とか、「入浴は週に何回入っているのか?」とか、「母親は、風呂🛀が好きだったから浴槽🛁につけて欲しい」と言ったりもする。半身麻痺もあり、リフト浴もない。谷河本人も浴室🛁内での転倒も怖がり、余計危険度が増す。また姉妹👭は、施設側と家族側、地域の町内会、民生委員、包括支援センターなどが参加する運営推進会議の家族側の代表だった。


何故そんなややこしい人が家族会の代表なのかと思っていた。他の職員もリーダーの小谷祐樹の出勤日に合わせて入浴🛀してもらうという方が安全だという事になったいた。

新島村は、そういった特別扱いが、谷河百合子が余計に気を遣わせる事になっていると思っていた。元はといえば自分の娘がそうさせているのだが。そういった気遣いが出来る部分では谷河は、本当に認知症があるのかな?と思った。新島村は、ナースコールに反応して居室に向かおうとすると、島部が訊ねた。

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