第8話 トイレ介助

電話☎️に出ても受話器を戻せない。鍋🍲を火🔥にかけ焦がしてしまうなど、日常生活に支障をきたすようになって来た。近くに住んでいた娘の育子が、佳子の異変に気付き病院🏥の物忘れ外来に連れて行った時には既に遅く、若年性のアルツハイマーと診察されてしまったそうだ。それが佳子が、まだ62歳の時だったという。元々、佳子の気位も高かったのだろう。家族は少しぐらいの物忘れは、年齢を重ねると起こる事と簡単に片付けてしまったのだ。


この施設🏠に来たのは、同じ県の市では地元でおかしな風評が立たないようにということらしい。で隣りのK市に来たらしい。今では、その市会議員の地盤は、娘の婿が継いでいるようだ。チラッと婿を見た事があるが、何やらナマズみたいにヌラヌラしていた。


居室にある田所の衣類👚も高そうな品物が多い。カシミヤのセーターなどは洗濯機で洗えないし、乾燥機もかけられないので持ってくるのは辞めて欲しいと断っても、他に服が👚無いと言われれば仕方がなかった。こちらから、世の中には、ユニクロや、しまむらなど手頃な衣料店がある事を、施設側からレクチャーしたくらいだった。


「コンコン」

誰かがトイレ🚽をノックした。新島村が返事をする前にドア🚪が開いた。

「新島村さん、大丈夫?」

島部がトイレを🚽覗き込んで来た。

「ええ」

「204号室の秋田裕子さんの入床介助もあるので、まあまあ急がんとね。僕も他の仕事があるので」

そう言って、残っている仕事を片付けに行くため島部はトイレ🚽のドア🚪を閉めた。


島部は、新島村の事を心配して様子を見に来て声かけをしてくれたわけではなかった。

一応気を「まあまあ」という言葉で気を遣ってはいるが、本音は「急いで」ということだ。

ただ「なので」の「で」が、刺さるような口調だった。「いつまでかかってるん?!と言った感じだった。


島部も、66歳にもなって夜勤をするのは肉体的にもしんどいと思う。そんな年齢になっても、生活から自由にならず、矢澤施設長に「夜勤を出来るだけ入れて欲しい」と言わなくてはならないなんて。


日本🇯🇵の社会が間違っているのか、高齢者👵に勤労意欲を与える素晴らしい国が日本なのだろうか?しかし、島部にとっては、働ける仕事があるだけマシというのか、そんなに生活が毎日が必死でやりがいの前に生きるのが大変といった所だろうか。老後に👴明日への希望より、今日の時給計算が大切かのどちらだろうか。








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