第45話 出会い頭
服を着替えながらそう新島村が訊ねた。
「お爺さんの体調はどう?」
野島は、控え気味に頭を上下させた。
「大丈夫ですよ」
「そうか。大変だね。介護をしながら仕事をするって」
新島村は、自分くらいの年齢ならそんな苦労をしたとしても仕方が無いと思うが、他に頼れる誰かがいないというのは辛い話だった。20代で祖父の介護をするというのは大変だろうと推察出来た。
新島村が着替え終わると「お先!」と言って、更衣室を出た。すると、丁度女子更衣室から、五十川が出て来た。
「うわああ!」
咄嗟に訳のわからない言葉が出た。五十川が少し驚いて新島の顔を見た。
「ごめんなさい。変な声が出ちゃった」
「新島村さんって、本当に面白いですね」
『えっ?面白い?本当は、面白くないでしょう?そんな事を言われると、おらあ、こっぱ恥ずかしいだあ!おじさん、照れるなあ』
変な沈黙が数秒あった。超絶に気まずい!な。何かを言わなくては。
「ま、ま、ま、マングローブの木🌳って、知ってますか?」
「ええ。亜熱帯の水辺に生えている木🌳ですよね?」
「で、ではマングローブの木🌳という種類は無いのを、し、知ってましたか?」
新島村自身、ふと思った。唐突に、何を言っているんだろう?
「そ、そ、そうなんですね?」
五十川が、ちょっと引き気味に答えた。
「新島村さんって、何歳ですか?」
五十川が、訊ねて来た。
「えっ?な、な、何で?」
「いつも私、何歳かなって思ってたんですよ。謎ですもんね」
「そうかな?44歳だよ」
「結婚💒しているんですか?」
結構踏み込んだ質問にどぎまぎした。
「いいや。独身です」
「そうなんだ」
「どうしたんですか?」
「何か雰囲気が、若いから」
五十川の上手い答え方にドギマギ、ドギマギアゲインした。
「まあ、アホは歳取らないというからなあ」
その言い方は、間抜け極まりなかった。
「でも小規模多機能って、大変でしょう?」
新島村は、自分自身にガッツポーズをした。
『いいぞ!自然な誤魔化し。ナイスですね。全裸監督ならそう呟いてくれただろう』
「そんな事もないですよ。小規模多機能は、色々な事をやらないといけないので大変なんですけど、随分慣れてきましたよ。何故、そんな風に思うんですか?」
「ほら、何かさ。使っている漢字が多いし、名称の中の言葉の中に反意語みたいなのが混じってるし。小さいのに多いとかさ、漢字だけのイメージを言っている僕は、介護職としたら何だそりゃみたいに思われるでしょうね」
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