第35話 起床介助

高齢者の派遣先は、派遣先の交通🚐事情もあるのか、免許証🪪が無かったり、通勤で遠かったりして、派遣会社からなかなか同じ人がここのグループホーム🏠に派遣されなかった。毎回毎回新しい派遣先からの高齢の作業員に、施設から片付けの段取りを話したり、ゴミのまとめ方を教えたりしなければならず、非常に手間だった。


そんなお試し中に、また別の高齢者の男性が来た事があった。新島村は、うんざりしながらまたもや掃除の段取りを一から教える。エレベーターも②と①しかないし、掃除🧹の範囲や、ゴミ🗑️を集める場所や、トイレ🚽掃除のやり方などを一通り説明し、「では後、お願いしますね」と言って任せた後、帰宅願望の強い佐久田の対応をしていた。

すると、その派遣された高齢者の男性が新島村に近付いて来て訊ねた。

「ここから、3階に行くにはどうしたらいいですか?」

「ここは3階は無いです」と答えた。

「ああ、そうですか」

男性は、不思議そうな顔をしてそう答えた。


佐久田も時々、「ここの3階に行くにはどうしたらいいですか?」と訊ねる事がある。佐久田の以前働いていた会社は、3階に社員食堂があったようで、よく3階に行く方法を訊ねる事があった。

先程の男性には、掃除の段取りを教えている際に「ここには2階しか無いです」と伝えていた。


やっと佐久田を、不承不承納得させて入浴🛀介助で洗濯🧺した衣類を畳んでいると、その派遣された高齢者が再び新島村に近付き訊ねて来た。

「私の掃除🧹道具知りませんか?」

「えっ?掃除🧹道具の場所ですか?」

「違います。私が、何処に置いたか?」

「はあ?」

思わず、目👀が点になった。『何で、あんたが置いた掃除🧹道具を知っているんだ!』と言いかけると、その男性が、更に訊ねて来た。


「3階に行くにはどうしたらいいですか?」

そう訊ねられた時、正直驚いた。あれはヤバかった。バリバリの認知症の症状が出ているのに会社も家族も誰も気付いていなかったのだ。小谷に相談し、今日来たその男性をもの忘れ外来を受診させるべきだと高齢者の派遣先に連絡✉️した。その男性の家族👪から「ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」というのと、「よくぞ、父の認知症と発見してくれました」と、後で菓子折りを貰う事になった。


田所を車椅子👩‍🦽に乗せて居室に入ると、部屋にはいつぞやの誕生日🎂カードが飾ってあった。田所を臥床させるために、前から抱えようとすると、「怖い、怖い」と言い出した。


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