第2話 義歯洗浄
新島村新は、宥めるように話しかけながら、手に薄く白いゴム手袋🧤をはめた。
「いいですか?今から外しますよ」
指を206号室の入居者、田所佳子の口👄の中に突っ込む。車椅子に座りながら、田所が顔を背けようとする。
「な、な、何、ふがふが、す、するんや。お、お、大の男が辞めとけ!」
田所が義歯🦷を外されまいと顔を背け手を、頭を振り回す。
「田所さん、た、田所さん、逃げないで!逃げないで!」
古田遊子ケアマネジャーが、入居者のケアプランを持って入口のロックを解除🔓して入って来た。島部が食べ終わった食事を片付けながら、呆れたように新島村を見つめていた。
古田ケアマネジャーは、綿樫トメのプランをピンク色のファイルに片付けながら、新島村の田所に対しての介助の様子を見ていた。古田は、とにかくピンクが大好きなケアマネジャーだった。持ち物は何から何までピンクだった。還暦をこないだ迎えたというから、ピンク🩷より赤🟥なんじゃないか?と思っている。
「こんなんするんやったら、盗るなあ!か、噛んだるねん!痛い事すな!」😤
「い、痛たたたたあ!」😖
義歯🦷の上下で、新島村のゴム手袋🧤をした突っ込んだ指を噛んだ。新島村が、自分の痺れる指☝️を抱えながら悶絶していると、近くにいた自立(1人で声かけだけで出来る)している利用者で、202号室の霧山陽子が、「うるさい!」と洗面台に来ると田所に向かって怒鳴ってきた。昔、霧山陽子は、教師をしていたらしい。痩せた皮を剥いたサラダゴボウのような体型をしていた。それに比べて田所は霧山の倍くらいありそうだ。
「うるさいって何や!芋虫🐛か?!」
「ごめんなさいね」🙏と、新島村は霧山に言いながら、ジンジンする指☝️がもげてないか確かめながらバタバタと指先を動かす。
「新島村さん、もうちょっと、静かに出来ませんか?」
そうたまたま書類を取りに来ていた古田真名子ケアマネジャーが訊ねてきた。
確かに新島村や、田所が大きな声を出すと、フロアにいる入居者が不穏に感じて騒ぎ出してしまう。不穏が伝染するのだ。周りの利用者に影響し、上手くいかなくなるのはわかる。
しかし、いくら手袋🧤をしているからといって痛いものは痛い😓のだ。
新島村新が、M市にある認知症高齢者施設「グループホーム にじいろ🌈」に介護職員として働いて9ヶ月になる。
しかし、古田遊子ケアマネジャーは何かと新島村の介護の様子を心配し、よく書類を取りに来る度様子をこっそり伺っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます