第56話 怪しい2人、それはガッツ星人

「や、や、やーね(屋根)!」

新島村は、噛みながら必死でそう答えると、矢澤施設長は冷たい顔では見つめた。


羽生結弦以上に滑った。完全なる4回転半の空回り。これが宴会場や、応援合戦の時ならどうなるんだろう?悪しき記録がDVDに焼きつけられ、3施設に配られて半永久的に残されてしまう事になるのだ。それはまるで「セブン暗殺計画」で、ウルトラセブンがガッツ星人によって透明の十字架に磔にされているような気分を味わう事になるのだろう。


増して応援団に五十川がいるなんて。恐らく緊張で身体が、固まって動けなくなるに決まっている。

「それはダメだ!」

新島村は、一気に言葉を吐いた。思わず急なストレスで一時性過呼吸になりかけたのだ。息切れし、肩で呼吸をしながら言った。

「それはダメだろうよ。ボーリングは期待してないけど、応援合戦でこの手のダジャレは辞めた方がいいよ」

矢澤施設長が、穏やかに諭すような口調でそう言った。


「ハードル、何か上がっていませんか?ダジャレ以外って言われてそんなの無理ですよ。本当に他に何も無いですよ」

「大丈夫か?施設代表なんだぞ。まだ時間はあるから、頑張ってよ」

そう言って、矢澤施設長は冷やかに笑った。

「やっぱり?この程度のダジャレじゃ、ダメだわね。やーね!」

服部が、苦笑いしながらそう言うと、新島村が答えた。

「へー(塀)とは、言え(家🏠)ねえかあ」

「まだ言うか?おいおい忘れたのか?本社には荒川という芸達者な猛者がいるからねえ」

矢澤施設長が、呆れながらそう言った。


「あっ、荒川由正あらかわよしまさか!」

服部が、突然思い出したかのように言った。

「だ、誰ですか?」

新島村が、怪訝な顔をして訊ねると、服部が、笑いながら言った。

「彼は凄いわ。本当にちゃんと仕事しているのか?って思うぐらい宴会には力💪が入るからねえ。本気よ。本気で応援団合戦にやってくるからね。去年なんか顔白塗りして、バカ殿の格好をして出て来たからね」

「更にその格好で、移動して夕方の宴会にも出て来ていたからねえ。一昨年は、自分の腹に人の顔を書いてへそ踊り💃してたからな」

「そうそう。あの衣装も全部自腹でしょう?気合いが違いますよね」

服部が、そう笑いながら通年の荒川の応援団合戦を思い出したようだ。


入口のドア🚪が開いて、古田ケアマネジャーが入って来た。矢澤施設長に微笑んだように見えた。先程の喫煙🚬室での様子が思い込こされた。矢澤施設長は、わざと目線を外したように見えた。







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