第57話 動揺して童謡を歌う男はどうよぅ?

「施設長、市の介護保険給付事務センターから電話☎️がかかってます」

古田ケアマネジャーからの言葉に矢澤施設長が頷くと、「まあ頑張ってよ。他の施設のグループにも負けられないからね」と言って、ドアの暗証番号を打ち込み解除🔓すると、古田ケアマネジャーと一緒に出て行った。何かを囁き合って笑顔を見せながら出て行った。そんな2人の後ろ姿を見送り、服部が呟いた。


「最近、あの2人何かあるなあ。デキてんのかな?」

「そうなんですか?」

この答え方に、自分自身で不自然なぎこちなく感じた。


一瞬、服部に古田ケアマネジャーと矢澤施設長のキスをしていた話をしようかと思ったが、服部なら電池🔋の要らない拡声器📢のように「あっ」という間にこの施設に話を広めてしまうに違いない。ここは黙っていた方が無難だ。能の創設者世阿弥も言っている。

『秘すれば花』と。


服部は、古田の事を余りよく思っていなかった。古田の仕事を余り理解していないところがあった。それは介護職としてのベース上にあってからこそ、ケアマネジャー業務が出来るのであり、古田が余り介護技術が無い事を知っていた。だからこそ、プランナーとして計画を立てるより、介護職としてまだまだやらなくてはならないことがあるのではないか。時々人手が足りなくて夜勤に入ってもらうと、何も出来ていない事が多々あったからだ。介護の仕事が、満足に出来ないのに、ケアマネジャーとしての仕事が出来る訳がないと思っていた。


ケアマネジャーとしての立場を優先するのか、介護職としての立場を優先するのかではなく、介護というのは、お互いの立場を上手く融合させて行って連携を取り合わないとケアプランが絵に描いた餅になってしまう。


「でも古田ケアマネジャーは独身だけど、矢澤施設長は結婚💒しているんじゃないですか?」

さりげなさを装う。パリコレのモデルのような装い方だ。

「矢澤施設長、バツ❌1らしいよ」

「えっ?そうなんですか?」

「一説によると、矢澤施設長の不倫が原因で別れたらしいよ」

「良く知ってますね」

その言葉に拡声器📢服部が、訳ありにニヤつく。


「浮気相手が自宅🏠に電話☎️とか、ポスト📮に刃物🔪入りの手紙✉️を書いて送りつけたみたいよ」

「凄い話」

「何か私生活が謎だもんね。介護職で、レクサスなんか乗ってるもんね」

「でも中古って聞きましたよ」

「それでもやんか?!」

服部が、そう言って微笑んだ。

「何かハデよね」

そう言って、服部が含み笑いをした。




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