第38話 Aさん

またAさんは、60歳代後半で若く体もガッシリしていた。認知症になっていなかったら、まだまだ介護保険を利用せずに何処かに働きに出かけることが出来、収入が得られただろう。Aさんは、妻をガンで亡くしてから娘が世話をしていた。


娘は、まだ若く働きにいかないと生活出来ないし、Aさんを民間の施設に預けるにはお金💰も無いのだろう。毎月ショートステイを利用し、一週間だけは在宅で頑張っていると言ったところなのだろう。


Aさんは、毎月来る度にイライラして不機嫌になった。彼は感じていたはずだ。

『ここが何処かわからない。ここからどうやって帰ればいいかわからない。いつもいた妻がいない。いつもいる娘がいない』


来る度にパニック状態になっていた。しかし、そうは言ってもAさんは、何とか自分の気持ちと折り合いをつけようと毎回頑張っていた。


だが、理解出来ずに時には不穏になりイラついていた。また男性で体もガッシリしているので、不機嫌になり暴力を振るい出さないかという剣幕で、介護スタッフに話しかけてくるので警戒していた。


Aさんが、落ちつかず不穏になった時は、娘からの手書き📝の手紙✉️を預かっていた。

『お父さん、幸恵は仕事で出張に行きますので、今日はここで泊まって💤ください』という手書きの手紙✉️を見せると、Aさんはそれを何度も何度も読み、「娘からの筆跡やな」と呟いて、少し納得し落ち着くというのを繰り返していた。また暫くしたら忘れしまい同じ事を繰り返しまうからだ。


Aさんは、ガンで妻が亡くなってから娘に頼り切っていた。毎回ショートステイの送り迎えは、娘の幸恵さんが行なっていた。娘が🚗に乗せてくれるのを楽しみに待っていた。その大好きな娘からの魔法の手紙📃は、何度も使い過ぎてヨレヨレになっていた。


また他の利用者で、同じように毎月長期利用をする女性B子さんがいた。B子さんは認知症がきつかったが、非常に従順でおとなしかった。また不思議と得体の知れない艶かしい色気があった。


化粧💄はされていないが、色白で髪の毛は白髪を隠して明るい髪色に染めていた。B子さんは、ショートステイに来ても不穏になる事はなかったが、時々予測不能の行動をする事があった。


錠剤の薬を掌に載せて飲んでもらおうとすると、薬と認識出来ず突然に床に放り投げてみたり、自分で尿意や便意を感じないので、職員が時間🕰️や様子を見ながら👀声かけしてトイレ誘導をしないと大変な事になっていた。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る