4 千本鳥居の謎を解け!
第1話
翌日、満夜は手に白紙の入部届を持って、凜理を引き連れ、一年の廊下に立っていた。
心なしか、満夜の鼻の穴が興奮に大きくなっている。
「もう部員はふやさんのやなかったの?」
「誰がそんなことを言ったのだ!」
「白山さんが入部したからもう満足したかと思うてた」
「正式な部になるためには部員三人ではなく五人は必要なのだ、凜理。今はたった三人しかいないではないか!」
満夜が一年の廊下で声を張り上げた。
凜理は周囲の視線が痛くて、一緒に廊下にいるのが恥ずかしくて堪らない。
「でも、この間勧誘に来たときは何の反応もなかったやないの。今更また同じことやっても同じやないの?」
「今回は白山くんもいるではないか。白山くんの友人たちを入部させるのが目的なのだ」
そこで大きく息を吸い込み、
「白山くん! 芦屋満夜だ。ここにいることはわかっている! 速やかに出てきてもらおう。休み時間はあと三十分だ、それまでここで待っているぞ!」
と呼び掛けた。
「三十分も羞恥プレイなん!? そんなん、いややわ。かんにんやわ」
満夜と凜理を遠巻きに見つめる数々の白い目……好奇の目……普通の神経ではそんな物にさらされてじっとしていることなんかできない。
「満夜だけで頑張って」
そそくさと廊下から去ろうとする凜理の首根っこを押さえて、満夜が声を潜める。
「いいのか……オレの胸先三寸でおまえの秘密は世にさらされてしまうのだぞ!?」
「ずるい……!」
去るに去られず、凜理は悔しげに地団駄を踏んだ。
廊下を歩く下級生たちから避けられながら、満夜は腕を組み十分ほど待っていたが、とうとう自分のほうから辛抱できなくなった。
「くっ! 白山くんはとことん我々を無視することにしたのか!? こうなったら陣中見舞いだ!」
「充分陣中見舞いやわ! こんなふうにこられたら、いくら部員でも恥ずかしくて出てこれへんよ。待ってよ、満夜。出てこないには訳があるんやから無理に連れ出そうとせんほうがええんとちゃう?」
満夜が一組の教室の前にたたずむ後ろから、凜理は呼びかけた。
そんな呼びかけにも応じず、教室のドアからいきなり入ってきた不審人物に驚いている下級生に向かって、満夜が話しかける。
「白山菊瑠はいるか? オカルト研究部部長、芦屋満夜だ。おとなしく出てくるのだ。話がある」
しかし、菊瑠らしき少女はいない。
「おい、君。白山菊瑠はこの教室か?」
近くにいた男子生徒に、満夜は尋ねた。
「ち、違います……」
「むう、嘘をついていていてもすぐにわかる。オレの目は節穴ではないぞ。本当に白山菊瑠を知らないのか!?」
ズズイッと迫られて、男子生徒は困惑した顔つきで激しく頭を横に振った。
「知りません!」
「ぬう」
すっと教室を出ると、二組でも同じ質問を始めた。
そのたびに、凜理が「お騒がせしました」と謝っていく。
とうとう五組の教室まで来て、凜理が満夜の裾を引っぱった。
「なぁ、もう諦めへん? 白山さんが何で一年お教室におらへんのか、本人の口から聞いたほうがいいんとちゃうのん」
満夜は入りかけた五組の教室に頭だけ突っ込み、ざっと見渡したが、見る限り菊瑠の姿はなかった。
「凜理のいうとおり本人に聞くしかないな」
あっという間に昼休みは終わり、満夜は諦めきれないという様子で、一年の廊下を振り返りつつ、二年の教室へ戻っていった。
「あんなふうに呼び出したら、出れるもんも出られへんよ」
「今週末の計画について知らせておく必要があったのだが……放課後まで待つしかないか」
「今週末? 何かするのん?」
凜理が不思議そうな顔をした。
「合宿だ。オカルト合宿をすることになった。集合場所は千本鳥居!」
「えー、何考えてるん、満夜」
と、そこで会話は途切れた。教壇に教師が立って、静かにしろと注意し始めた。
「とにかく、明日の土曜の放課後、凜理の家に泊まるといってくる」
「むちゃくちゃやなぁ」
満夜の横暴にため息をつき、凜理は教科書を開いた。
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