中二病を調査する理由 3


 8月の終わりにある文化祭で、2年C組は、ミュージカルダンスを発表することになった。演目は、


『あの素晴らしい馬と鹿をもう一度』である。


 その代表メンバーの中の一人に、僕と彼女も選ばれた。文化祭の準備で彼女と関わっていくうちに、気兼ねなく話せる仲になり、一緒にいると楽しかった。美しい黒髪に、パッチリとした大きな瞳、明るい笑顔がなによりも魅力的だった。


 しかし僕は彼女と親しくなればなるほど、彼女の言動に違和感を感じ始めたていた。


 ――いくつかの例をあげてみる。


・歴史の資料集を見せて、「土偶」をやたら賛美する。


・お弁当の唐揚げを「いけにえ」と呼ぶ。


・アニメ化された人気漫画のアニメを、――全身全霊で否定する。


・彼女は「黄昏」という単語を意識的に使いたがる。


・今から10分間、異世界ファンタジーにいる設定にしようと、休み時間に誘われた。



 ――そして、とうとう僕の疑念は、確信に変わった。



「彼女は中二病だと思う」





つづく






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