中二病を調査する理由 4
1限目の始まりのチャイムが鳴った。英語Ⅱの授業だった。僕の心は、右斜め前の座る、彼女の全てを追いかけていた。
「――僕は彼女に、恋をしていた」
彼女ともっと仲良くなりたい。心の奥底で強く願っていた。しかし得体の知れない、不治の病と言われる「中二病」対しては、僕は正直、怯えていた。そして、この葛藤の中で眠れない夜が続き、授業など身に入らなかった。
「Nothing venture, nothing win.」
「If you don't get into the tiger hole.」
「No pain, no gain. これらの諺の和訳、だれか答えて」英語Ⅱの吉田先生が言った。僕の後ろの座席の黒田が、すぐに手を挙げた。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」黒田が力強く答えた。
「That's right. Ms. Kuroda. 中学英語の復習になるけど、作文問題には使えるから、覚えといてね」吉田先生は爽やかに、僕に伝えたいような気がした。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』
――この言葉が、今の僕の、耳の鼓膜に響いた。
つづく
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