第3話 パーティーの終わりに

 エリナの妹のアミナは用事があると言って何処かへ行っていた。

 ハルトはアミナがどこへ行ったんだろうかと不思議に思ったが、エリナにトイレに行ったのよと嗜められた。

 パーティーには、警察官が警備に付いていた。

 その中の二十代前半くらいの警察官を見るや、エリナはバツが悪そうに顔を背けた。そうして、その警察官の前を足早に通り過ぎようとした。

 エリナの行動は逆にその警察官の気を引いてしまった。


「おや、エリナちゃん、だよね」


 エリナはビクリとして足を止めた。

 甘いマスクをしたその警察官はエリナに歩み寄り、ハルトたちを一瞥して話を続けた。


「いやあ、やっぱりエリナちゃんじゃないか。僕はここの警備を担当することになった、警視庁の播磨太郎巡査だよ。よろしくね」


 そう言って20代前半と思しき播磨巡査はハルトたちに握手を求めた。

 ハルトは思わず握手したが、エリナは断固として拒否した。


「私たちは忙しいので、播磨さんは私たちのことは気にせず職務に集中してもらって良いですか」


 エリナはハルトを盾にするようにして言った。播磨はエリナの真一文字に結ばれた唇を見ても笑顔を崩さずに言った。


「ふむ、先約ありと主張したいわけだね。まあいいさ、今日1日警備を担当させてもらうから、何かあったら僕に言ってよ」


 播磨巡査は自分の持ち場へと戻っていった。

 ハルトは何となく合点がいった。

 エリナは播磨巡査を避けたいのだ。日頃から絡まれているのか、どうやら彼を避けるためにハルトは連れてこられたようだ。


「なあ、一つ聞いても良いか。俺はあの警官から逃げるために利用されたのか。悪いけどそういうことなら俺は帰るよ」

「連れないわね。あの警官は昔から事あるごとに私の近くに来て良い加減うざいのよ。これも何かの縁だと思って、もう少しだけここにいて」


 エリナはハルトを引き留めようとする。

 会場の奥が光に包まれた。


「うわ!」


 ハルトは思わず右腕で顔を庇った。周りの人達も、突然の出来事に騒然としてどよめいていた。

 光が収まると皆が落ち着きを取り戻した。そして再度、非日常を見るのだった。

 会場の中央を見たハルトは愕然とした。

 突如として、一体どこから侵入したのか会場の中心に大男が出現していたのだ。

 外見から判断するには30代前半と思しき男性だった。黒い服を見に纏っていた。その男の肌は白く、目は青く、整髪料のようなもので髪はオールバックに塗り固められていた。

 何と驚くべきことにアミナが大男の腕に抱き抱えられていたのだ。

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