第2話 パーティー
日が変わり、雨が降るほどではないが重苦しい雲が空を覆っていた。時刻は正午を過ぎたあたりだった。
ハルトは眼前に聳え立つ建物に畏怖の念さえ抱いていた。
そこはハルトが足を踏み入れたことがない帝国ホテルだった。
約束通り、加賀エリナとともに訪れた。ハルトはもともと、あまり乗り気ではなかったし半ば強引に誘われた。突然犯罪者呼ばわりされて仕方なく来たのだ。とにかく今日一日の我慢だ。
帝国ホテルの中に入ると、加賀衆院議員政治資金パーティーと書かれた立て看板を尻目に奥のホールへと通された。
そこにはスーツに身を固めた大勢の大人たちがいて、彼らはグラスを片手に談笑していた。
今日の加賀は一人の少女を連れていた。エリナが紹介してくれた。
「この娘は私の妹のアミナよ」
エリナに引けを取らず美少女だと思った。それを察知してか、すかさずエリナは言った。
「私が監視してるから付き合おうとか思っちゃダメよ」
「思ってねえよ」
ハルトは少し憤慨したように言った。アミナがこの人かとしげしげとハルトを品定めでもするかのように眺めてからエリナに連れられて挨拶回りに行った。
横に立つエリナは卒なく彼らに挨拶をしていた。
ハルトはただボーッとしていると、一人の紳士が話しかけてきた。
「やあ、君は加賀恵里奈さんの知り合いのようだけど、こういうところは初めてかい?」
「はい、こんな立派なホテルにきたのは初めてです」
「そうかい。緊張してるのがありありと伝わってきたよ。ちなみに私はこういうものだよ」
はにかむハルトに男性は名刺を渡してきた。
「崎山コンストラクターズ?」
「ああ、そこの社長の崎山毅だよ。恵里奈さんのお祖父さんは国会議員でね。ここに集まった人たちはコネクションが欲しいのさ」
「国会議員?」
「与党の国会議員さ。お父さんは会社を経営されていて、家族みんなで応援してるんだね。アルバイトを雇えば良いのに健気なもんだよ」
「へえそうなんですか」
「妹さんを連れていfるだろう?」
「はい」
先程エリナからマリナだと紹介された少女のことだろう。崎山は急に小声になった」
「彼女には前世の記憶があるらしいよ」
「え」
「話によると姉の運命の人が今日来るとか日頃から言ってたからね。君のことかな」
「まさか、かんべんしてください。何で他人のあなたがそこまで知ってるんですか」
思わずそう口走っていた。エリナのあの様子では、おそらくエリナの方からお断りだろう。
崎山は笑った。
「昔、探偵をしていたからね。まあ、子供の言うことだから半々に受け取っておけば良いよ。挨拶が終わったようだね。私も挨拶してくるかな」
そう言って、崎山は人だかりの方へと行ってしまった。
今日のこのパーティーはエリナの祖父の選挙の政治資金パーティーだということらしい。政財界から有力者が集まっているのだろう。
一通りの挨拶を終えたのかエリナが戻ってきた。
ハルトはエリナと妹とで歩きながら話した。エリナはハルトをあの怪しげな研究所に勧誘しようとする。
「あなたも高校で部活に入ってないみたいだし、どうせ暇なんでしょう? 今人手不足なのよ。あなたもUT研究所に入らない?」
ハルトはどうも気が進まなかった。
「嫌だよ。どういう研究所か分からないし、このパーティーに付き合うだけって話だったろ」
エリナの言葉に呆れたようにハルトが言った。
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