第16話 整理整頓好き
燃えるゴミはここの焼却炉で燃やしてしまうが、燃えないゴミに関しては二週間に一回、業者が回収に来た。私はゴミ捨ての手際の良さが認められ、業者とのやりとりを任されるようになっていた。
ゴミだけではなく、私の整理整頓好きが功を奏し、書類の整理や備品の管理などは次第次第に私の仕事になっていった。
データの管理も得意だったが、病気など重要なデータを任されることはなかった。
点字や手話の能力も認められ、相変わらず病院の三階に出入りすることを許されていた。目や耳が不自由な患者にとってはひと時の安らぎになっているようだった。
また、イベントも企画し、ちょっとしたお祭りのようなものや、クイズ大会も開催した。田沼や他の職員からの評判も良いようだった。
Fとの接触や看護師の副島とのトラブルも忘れ去られているようだった。
その副島亜希子は内川にふられたらしく、一時期は肩を落としながら廊下を歩いていたが、しばらくして元のテキパキとした感じに戻った。
私が窓際にひとりで立っているとき、彼女が話しかけてきた。
「もう、僕と話していいんですか……」
私がそう聞くと、彼女は「私は何も言っていない。他の人が拡大解釈しただけだ」というようなことを言った。
つまり、彼女は何も悪くなく、他の人の捉え方や言い方が問題だったと。
また、内川には告白したわけではないらしく、単に内川の態度が冷たかったとか邪険にされたとか、それこそ副島亜希子本人の捉え方の問題のようだった。
木原のことにも話が及んだが、何を話していいのかわからず、無言の時間が流れた。副島は「あの人はいい人だった……」とだけ呟いた。
副島のたどたどしいがまくしたてるという普段しゃべりなれていない人特有のしゃべり方とか、顔がびくびくするところとか、まだ三十過ぎなのに白髪がちらほら見えるところとか、彼女が疲弊しているというより、いくらか精神的に病んでいる感じがした。彼女は看護師だが、もしかすると患者に近いのかもしれない。私はそんなことを考えていた。
そもそも、私から見れば、患者よりもそれ以外の人たちの方が病んでいるような気さえした。
そして、私自身も……。
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