第11話 鬼ばばあのその後
ウメさんが住んでいた古ぼけた家は、その後、街の人たちが「誤解していたお詫び」だと言って、黒ずんでいた家の外壁の板に、まっ白のペンキを塗ってくれました。壊れかけていた雨どいも、ケンタのお父さんとお母さんが直してくれました。生垣を多い尽くしていたツタの葉も、ある程度きれいに整えられました。
以前のウメさんの家は、確かに「妖怪屋敷」に見えましたが、今ではその面影はこれっぽっちもなく、昭和テイストを残しながらも、とてもハイカラな雰囲気となりました。何と言っても、それまではなかった表札が玄関にかけられたのがとても印象的です。街の人が手作りで作ってくれた表札には、トールペイントという技法を用いて、横文字で「Mathutake」とオシャレに描かれているのです。
妖怪屋敷と呼ばれていた頃は、ウメさんの家を訪れる人はほとんどいませんでしたが、今では毎日誰かが入れ替わり立ち代わり立ち寄る場所となりました。ウメさんと同じくらいのお年寄りだけでなく、赤ちゃんを連れた若いママさんや小学生だって、ウメさんの家を訪れるようになりました。池で泳ぐ鯉に餌をあげることも出来ますし、広い庭は車が来ることもなく、安全に遊ぶことが出来るからでした。
ケンタはというと、相変わらず毎日やってきて、ミーコと子猫たちと遊び、ウメさんに教えてもらって、インターネットで子猫たちの里親探しを始めました。これからはインターネットの時代ですから、ケンタにとってもいい勉強になることでしょう。
そして真之介さんの提案通り、ウメさんは週に一回、ボランティアでお年寄り向けのパソコン教室を開くようにもなりました。ウメさんの家には、ケンタの子猫たち意外にも数匹の捨て猫が保護されていましたが、猫の里親探しにも協力者がぐん! と増えました。相変わらずあまり素直には感情を出せないウメさんではありますが、以前よりもっとシワが増えたように思います。そう、笑いシワが増えたのです。
そんなウメさんたちを、マルはいつも松の木に座って眺めているのですが、時折ウメさんはマルの方を向いて、ニコッと笑ったり、ウィンクをしたりします。やっぱりウメさんにはマルが見えているようです。
「適わないなぁ」
今回のウメさんの件に関して何も出来なかったマルは、『神様の領域』にいると思われるウメさんを尊敬するようになりました。人間でありながら、天使以上の働きをしているウメさんを見習わない手はありません。マルは今晩にでも、みんなが寝静まった頃にウメさんのところを訪れて、いろいろ話しを聞いてみようと思いました。そうすれば、天使としてもっともっと街のために出来ることがあるはずです。
さぁ、そうと決まれば、早く街のパトロールを済ませておかなければ!
マルは松の木から立ち上がると、背中の翼を大きく広げ、空へと飛び立ちました。
天使のマルが守る街~鬼ばばあとにゃんにゃんにゃん 恵瑠 @eruneko0629
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