第5話 二人の約束
それからというもの、ケンタは学校が終わると一度家に帰り、ミーコのご飯を持って鬼ババアの家を尋ねるのが日課になりました。鬼ババアもケンタを待っている様子が分かり、マルは二人の交流を微笑ましく思いながら見守っていました。
あれから母猫のミーコが一緒にいるおかげもあって、子猫たちはすくすくと成長し、今はもうぱっちりと目も開き、なんとも愛らしい子猫になっています。母猫そっくりの三毛猫は、ミケ。黒と白のブチ猫は、ブチ。真っ白の猫は、シロ。という名前まで付けられました。
とても平和に日々が過ぎているようでしたが、実は二人の交流をあまりよく思っていない人たちがいることに、マルは気づいていました。まずは、ケンタの両親です。ケンタの両親は、飼っていた猫のミーコだけでなく、子猫が三匹ともいなくなったことに不信感を抱き、ケンタの後を尾行して「妖怪屋敷」へと入って行くケンタを見てしまったのです。
街で良い噂を聞かない「妖怪屋敷」
しかも、そこに住んでいる鬼ババアと、息子のケンタが何やら怪しいことをしている様子に、ケンタの両親は不安を感じたのです。
おまけに、ケンタが通う小学校の子供たちにまで、ケンタの噂は広がってしまっていました。「妖怪屋敷」に通っている小学三年生の子供がいる。アイツも妖怪の仲間に違いない。と。
おかげでケンタは学校に行けば行ったで、やたらといろんな子に絡まれるようになりました。
「妖怪! 妖怪!」と言う子もいれば、「鬼ババアと仲良く何してんだよ!」とからかってくる子もいます。
けれど、ケンタは気にしないことに決めていました。
何と言っても、自分と子猫たちを助けてくれたのは鬼ババアに他ならないからです。ケンタの両親でさえ、子猫を助けようともしてくれなかったことを思うと、鬼ババアだろうが妖怪屋敷だろうが、ケンタにとっては感謝する気持ちしか芽生えませんでした。
いつしかケンタは「妖怪の孫」と呼ばれるようになっていました。クラスでも「妖怪の孫」に話しかけてくる子供はいません。ケンタは次第に孤立していきました。それでも、ケンタは絶対に学校を休みませんでした。学校へ行ってから鬼ババアのところへ行く。それが二人の間で交わされた約束だったからです。
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