第8話

 「……というわけでね、君を少しだけ人間にしてあげる。だから、君がパパとママに伝えるんだよ? いつまでも悲しんでいてはいけないってことと、赤ちゃんはまた来てくれるんだってことをさ」

 マルが言うと、星の子は喜んできらきらと光りました。たくさん眠って落ち着いたからでしょう。今朝会ったときよりも、星の子の光りはずっと明るく、キレイに見えます。

「天使さま、ありがとう! 僕、パパとママに会えるんですね! 僕、必ず伝えます! もう泣かないでいいんだよっていうことも、ちゃあんと伝えます!」

 星の子は、夜が更け、空が白みはじめるのを心待ちにし、雲の上でそわそわしていました。

 マルは覚悟を決め、空がうっすらと白くなった頃、星の子と共に町はずれの家にやってきました。今朝と同じように、テラスに降り立ちます。

 そして、ウキウキとしている星の子の前で、マルは背中の羽を1本抜き、そうっと星の子を撫でました。

 とたんに、星の子の小さな体から光り輝く一本の光が空へと伸び、一瞬目を覆うほどの眩さとなって、マルは両手で目を覆いました。光はすぐに落ち着きましたので、マルがゆっくりと両手を外すと、目の前にはかわいい男の子が立っていました。くるくるとした目、薄紅色の頬。なんとなくではありますが、イタズラ好きな元気な男の子という印象を持ちます。

「天使さま、どうですか? 僕、ちゃんと人間に見えますか?」

 マルの前で、男の子はくるりん! と回ってみせました。どこからどう見ても、人間の男の子です。

「うん。大丈夫だよ。ちゃんと人間に見えるよ」

 マルが言うと、男の子は心から嬉しそうに笑いました。

 そして緊張した顔をして、テラスの窓に近づくと、コンコン! と窓を叩きました。テラスのあるその部屋が、パパとママの寝室だということを、男の子は知っていたようです。

 すぐに窓が開き、女の人が顔を出しました。

 すぐに窓が開いたことを考えると、ママは眠ることも出来ず、こんな時間まで起きていたのでしょう。

 ママはげっそりと頬がこけ、やつれているように見えました。毎日泣いていたからでしょう。目も腫れているようです。

 ママは、急に現れた男の子を見ても驚くこともなく、どんよりとした目で男の子を見つめ、その後ゆっくりと後ろにいるマルを見ました。

 男の子がママに向かって手を伸ばします。

「ママ!」

 その言葉に、ママは大きく目を見開き、一瞬口を手で覆いましたが、男の子が近づくと、何も言わずに男の子をぎゅううっと抱きしめました。

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