第7話
「なるほどねぇ」
マルとシカクさんの説明を聞いて、急遽集められた天使仲間のサンカクさんとダイケイさんは、「うーん」と考え込んでしまいました。
マルとシカクさん、サンカクさんは、ダイケイさんの街の雲の上にいました。
「難しいのは分かってるの。だけど、今後の仕事にも関係してくる問題よ? 星の子がみんな地上に留まったら、とんでもないことになっちゃうでしょう?」
ベテランのシカクさんの言葉に、みんな「それはそうだ」と頷きました。
「だからと言ってこのまま放置したら、星の子は消えてしまうわ。お空に戻してあげないと、次のチャンスを失ってしまうことになる」
シカクさんの言葉に、え? とマルは顔を上げました。
「星の子は、またチャンスがもらえるんですか?」
シカクさん、サンカクさん、ダイケイさんは、顔を見合わせ、ヤレヤレと首を振りました。
「マルったら、私、さっきも言ったはずよ?」
シカクさんは呆れ顔です。
「マルだって聞いたことがあるはずだぜ? 街を守る天使に任命されるとき、神様から説明がされてるはずなんだから」
マルは必死に任命式のときを思い出そうとしました。けれど、みんなよりひよっこ天使であるマルも、街を守って既に百年ほどは経っています。百年前のことを思い出すのは、なかなか骨が折れる仕事です。
「すみません。思い出せません」
素直に告げると、シカクさんが教えてくれました。
「星の子は空に戻らなくちゃならないけれど、神様のお手伝いをしたり、お利口にしていれば、また順番が回ってくるわ。そうなれば、また地上に降り、人間として生まれることが出来るのよ」
マルの心は弾みました。星の子にすぐに教えてあげたいくらいです。
「ただ、どれくらいの時間がかかるかは分からないわ。だから、別のパパとママの子供になることになるの」
あぁ、そうか……。ケーキ屋のパパとママのところに行くことは出来ないんだ。
せっかく弾んだ心も、ちょっとだけ萎んでしまいました。
「あれ? でもそうしたら、ケーキ屋のパパとママのところにも、別の天使が下りてくる可能性があるってことですよね?」
マルが気づいて言うと、3人の天使がにっこり笑いました。
「もちろんよ!」
「じゃあそれを、パパとママ、それから星の子に教えてあげればいいってことですよね!」
さすが先輩天使たちです。
マルは嬉しくなりました。
けれど、もっともっと嬉しくなることを、ダイケイさんが教えてくれました。
「マルの羽で、星の子を一撫でしてごらんよ。時間はほんの少しだけど、星の子が少しだけ人間の姿になれるから。空に帰る前に、パパとママに会わせてあげるといい。そうすれば、星の子も気持ちよく空に帰れるだろうしさ」
マルはダイケイさんに飛びつきました。
「わー! すごいことを教えてくださって、ダイケイさん! ありがとう!」
マルは大喜びしていましたが、それを見ていたサンカクさんが冷静な声で言いました。
「それって、本当は禁止されてることだぜ? 大丈夫か? 神様にバレたら、マルは罰を受けることになるかもしれない」
先輩天使のシカクさん、サンカクさん、ダイケイさんは、マルのことを心配そうに見ています。 マルは考えました。
どうすることが、一番正しいことなのか?
どうすることが、天使としての役目を果たせることなのか?
悩ましい問題ではありましたが、マルが悩んだのは一瞬でした。
マルが守る街のパパとママ、そして星の子を笑顔にすることが出来るのなら!
神様に叱られて罰を受けることになったとしても、マルの仕事は街の平和を守り、人々の心を守ること。人間の笑顔こそ、マルが守り、大事にするべきものなのです。マルは自分が信じる方法を選ぶ! と決めました。
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