第6話

 マルは星の子に、雲の上で眠るように言いました。明るい陽射しの中では、どうしても星の子は目立ってしまいますし、目の前にいる星の子が、ひどく疲れているように見えたからです。

 星の子はおとなしく雲のふかふかの中におさまり、間もなくスースーと寝息が聞こえてきました。星の子が眠ったのを確認すると、マルは星の子に気づかれないよう静かに雲から飛び立ちました。

 ベテラン天使のシカクさんに相談するためです。

 マルも疲れていましたが、街の平和を守るため。そして、星の子を消滅させることなく、お空の神様の元へ帰したいと思ったからでした。


 シカクさんが住んでいる雲は、マルの街の雲よりもずっと大きく、シカクさんがどこにいるのかすぐには分かりません。

「シカクさーーーーん!」

 マルが叫ぶと、ずっと向こうまで続く雲の端っこの方から「こっちよ~」と声が返ってきました。マルは翼を羽ばたかせ、急いでシカクさんの方へ向かいました。

 シカクさんは、ちょうど朝ごはんを食べているところでした。

 雲のスープに、雲のおにぎり、おまけに雲のプリン付きです。

 マルはいつも適当に雲をちぎって食べているだけなので、その豪華な朝ごはんに目が釘付けになりました。

「マルも一緒に食べる?」

 シカクさんはベテランなだけあって、マルの気持ちなどすぐに分かってしまうようです。

 マルは遠慮なく、シカクさんと一緒に朝ごはんをいただくことにしました。

 そして食べながら、星の子のことを相談しました。

「神様に言って、もう一度地上に下してもらうことはできないでしょうか?」

 マルが言うと、シカクさんは首を振りました。

「マルだって知っているでしょう? 地上に降りるには順番があるわ。星の子になったのなら、また空の上に戻って、次の順番が来るまで待たなくちゃ」

 それはそうなんですが……マルは雲を食べながら、もごもごと言いました。

「それに、規則を破った星の子のことが広まったら、同じことをする星の子が出てきてしまうわ。それはとても困ることだから、神様は絶対に許可されないと思うわ」

 マルは、涙を流す星の子を思い出しました。

「でも、このままじゃ、パパもママも、星の子も、悲しいままお別れになっちゃう」

 マルの胸は張り裂けそうでした。

 きっとパパとママは、赤ちゃんが来てくれたことを喜んでいたはずです。生まれてくることを心から待っていたと思うのです。その赤ちゃんが、星の子になってしまったのですから、ママが病気になってしまったのも分かる気がしました。

 シカクさんは、ひざについた雲のカケラを払うと立ち上がりました。

「しょうがないわね。じゃあ、みんなにアドバイスを聞いてみましょ? 何かいいアイディアが閃くかもしれないわ」

 マルは、シカクさんの言葉に元気に返事をし、マルとシカクさんは、また別の雲を目指して飛び立ちました。

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