第2話

 真夜中のパトロールを終えたマルは、いつもならすぐに羽で体をくるみ眠りにつくのですが、今日は頑張って起きていよう! と決めていました。

 声の主を探すためです。

 ただそうは言っても、一日中仕事をしていたマルは、疲れもあって、懸命に目を開こうと頑張ってみてはいるのですが、気を抜くと瞼が重くなってしまいます。

 いけない! いけない! と、マルは伸びをしたり、雲の上を動き回ったりして、眠気と闘っていました。

 そうして、やはり西の空が白み始めた頃、微かに、本当に微かに「……泣かないで」という声が聞こえてくることに気づきました。

 マルは、その声が街のどちらからくるのかを聞き逃さないよう、耳をそばだてました。

 「……泣かないで」

 声は続いています。

 マルが守る街はそう広くはありませんが、やはり「街」というだけあって、相当の数の人間が住んでいます。まだ朝ではありませんが、新聞配達のおじさんや、パンやさんの仕事は始まっていますので、その音も聞こえてきます。

 駅にも明かりが点きはじめ、人間が動き出す時間が近づいているのを感じます。

 マルは注意深く音を聞き分けながら、「泣かないで」と囁く声の方へと雲から飛び立ちました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る