天使のマルが守る街~星の子ちゃん

恵瑠

第1話

 マルは、街を守る天使です。何か事件が起きれば、人間に気づかれないよう解決へ導き、街に住む人たちの暮らしや生活、それに心を守ること。それが、神様からマルに与えられた仕事でした。

 マルは、街の上に浮かぶ雲に住んでいます。

 今日も真夜中までのパトロールを終え、ふわふわの雲の上に戻ってくると、あくびをしながら羽で体を守るようにしながら丸くなり、眠りにつきました。

どれくらい眠ったでしょうか?

 

「……泣かないで。ねぇ、泣かないで」


 寝ぼけ眼のマルの耳に、声が聞こえてきます。

 あぁ、まただ。

 マルは、目をこすりながら体を起こしました。

 まだ朝と言うには早い時間ですが、うっすらと西の空が白くなり始めているように見えます。もうすぐ夜が明けるのでしょう。

 マルは、ここのところ、この『声』に起こされることが増えていました。『声』は、夜が白みはじめるこれくらいの時間になると、か細い、弱弱しい声で聞こえてくるのです。

 マルは雲の端っこまで歩いていくと、雲から体を乗り出して街を見下ろしてみました。

 誰が泣いているのか見えるかもしれない、と思ったからです。

 マルは目をこらして街全体を見渡しましたが、声の主は見つかりません。

「……泣かないで。ねぇ、泣かないで」

 弱弱しい声は続いています。

 声の主が誰なのかも気になっていることでしたが、マルはその言葉も気がかりでした。「泣かないで」と言うからには、誰かが泣いていることになります。つまり、この街の中に、泣くような悲しい出来事が起きているということです。

 最初はそんなに重大なことだとは捉えていなかったマルですが、こうも毎日声が続くのでは、さすがにマルも気になって、ゆっくり眠ることだってできません。

 マルは、声の主が誰なのかを突き止めること、そして、悲しい思いをしている人が誰なのかを探すことに決めました。

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