第10話
「マルが解決するとはなぁ」
ダイケイさんが意外そうに言いました。
今日は月に一度の天使会議の日です。マルは、今月の当番であるサンカクさんの街の雲の上にいました。問題が解決したからか、みんな寛いだ様子です。
「まぁ、俺の街でもしっかり見守っていくよ」
ダイケイさんはそう言って「まかしとけ!」と付け加えました。
トーヤの家族は、一番最初に住んでいたダイケイさんの街に帰ることになったのです。トーヤのお友達もたくさんいるし、パパの会社も、ダイケイさんの街の方が近いからでした。
「それにしても、人間って、どうして『我慢』なんてしちゃうんでしょう? 溜めこんだら爆発するってわかってるのに」
マルが不思議そうに言うと、ベテランのシカクさんが言いました。
「人間は『我慢』が『美徳』だと思ってるのよ」
「美徳?」
「いいことだってこと」
「爆発するのに?」
「加減を知らない人間が多すぎるんだよ」
「そうそう。我慢ばっかで、うまく吐き出せない人間って多いよね? 苦しいくせにさ」
「だけど『我慢』せずに、言いたいことばかり言って、やりたいことばっかりやったら、人間の世界は崩れるでしょうね。それに、あたしたちの仕事も増えるに違いないわ」
「それは困る!」
「仕事が増えるのはイヤだ」
「でしょう? だから、ある程度は我慢して、うまく吐き出せるように手伝うのが一番いいのよ。それが街の平和を守る方法よ!」
マルはまたひとつ、人間の難しい問題を解決する方法を学びました。マルも、天使として、着実に成長しているようです。
そんなマルが、大事な引き継ぎ事項を思い出しました。
「そうだ! ダイケイさん! トーヤが、シュウヤに自転車の乗り方を教えるって言ってました。二人がけがをしないように、見守ってあげてください」
マルが言うと、ダイケイさんが「了解」と言って、にまりと笑いました。
さあ、これで『引き継ぎ』は終了です。マルは、先輩天使の3人に挨拶をすると、羽を羽ばたかせ飛び立ちました。次の天使会議はまた1か月後です。それまで、街を平和に保てるよう、マルはまた頑張らなくてはなりません。
マルが見守る街が見えてきました。街の灯りが見えてくると、マルはホッとします。あの灯りが見えると、マルの街の平和が保たれていると思えるのです。
マルは、街を見守る天使です。街の平和を守るため、明日も早起きして、パトロールを続けます。
もしあなたに困ったことが起きたなら、きっとマルや天使たちが手を貸してくれることでしょう。
天使のマルが守る街~心の声 恵瑠 @eruneko0629
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