第6話

 このままじゃダメだ! マルは思いました。

 パパもママも、トーヤの声を聞こうとしていません。大変なのは分かります。でも、トーヤはいつも一人で、全てのことに耐えています。言いたいことも、叫びたいことも、全てトーヤは声に出すこともなく、トーヤ自身の中に溜め込んでしまっているのです。

 マルは思い出しました。天使会議のとき、シカクさんが言ったのです。

「人間は、吐き出さないと爆発するわ。トーヤはもうパンパンに膨らんでる。じきに爆発するわ。あたしたち、それを防ぎたかったけど、あたしたちにはどうしても出来なかった。マル、お願いだから、トーヤを助けてあげて!」


『吐き出さないと爆発する』


 でも、どうやって?

 ヒイラギの木の上でマルが唸っていると、トーヤの部屋の中から、小さな声が聞こえてくるのに気づきました。マルがそっとトーヤの部屋の窓に近づくと、トーヤはベッドの上に寝そべってしゃくりをあげ、泣いていました。

 トーヤはずっと耐えていました。

 叫ぶことも、喚くことも、泣くことも。

 だから、泣いているトーヤを見て、マルは少しホッとしました。『泣く』というのは、吐き出す手段のひとつだということを、マルは学んでいたからです。

 でも、ベッドにうつぶせで静かに泣くトーヤの背を見て、マルはぎょっとしました。

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