第5話
その夜、トーヤの家のリビングの明かりが遅くまで明々と灯っていました。パパからの連絡で、ママも帰ってきていたのです。二人は、リビングのテーブルを挟み、深刻な顔で話し合っていました。
「トーヤをおばあちゃんの家に預けたらどうかと思うの」
ママが悲痛な声で言いました。
「どうしてアイツには分からないんだ! 家族みんなで頑張っていることなのに! アイツは、お兄ちゃんなのに!」
パパは苛立っています。
「俺だって、会社がどんどん遠くなるのを我慢して引っ越してきたんだ。シュウヤの病院とトーヤの学校に近いところをと思って、この家を借りたんだ。どうしてそれが分からないんだ!」
パパはまだ怒っています。
マルは、ヒイラギの枝の上からパパとママのリビング、トーヤの部屋を心配そうにのぞいていました。トーヤの部屋にも明かりが灯っていて、パパとママの会話をトーヤが聞いていることを知っていたからです。
トーヤが部屋のドアを開くのが見え、マルは息を飲みました。トーヤがパパとママに向かって、何かを言おうとしたのです。
が、その時、ママの携帯が鳴り響きました。慌ててママが携帯を耳に当てます。
「え? シュウヤが? はい。はい。分かりました! すぐに行きます!」
ママのただならぬ権幕に、パパは急いでママと自分のコートを持ってくると、自分は羽織りながらトーヤに言いました。
「ママとシュウヤの病院に行ってくる。お前はもう寝てなさい」
パパとママは慌ただしく玄関で靴を履くと、そのまま出て行きました。トーヤの口から出ようとした言葉は、そのままトーヤの口の中に留まり、トーヤはごくん! とその言葉を飲み込んでしまいました。
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