第4話

 学校でも、トーヤがしゃべることはありません。帽子を取ることもありません。転校生ということもあって、クラスのお友達はトーヤを仲間に入れてくれることもなく、トーヤはますます孤立していきました。先生でさえ、どうしたらいいのか分からないようです。

 そうしているうちに、トーヤは学校へ行かない日が多くなりました。先生がトーヤを迎えにみえても、トーヤが玄関を開けないので、解決しないのです。

 先生は困って、パパに電話をされたようでした。

 その日の夕方、いつものように部屋にいたトーヤの耳に、玄関を開ける音がしました。トーヤは寝転がっていたベッドから、ガバッと起き上がり、急いでドアを開きました。

 マルはヒイラギの木の上にいて、その一部始終を見ていました。だから、見逃しませんでした。トーヤの顔が一瞬喜びに輝いたことを。

 でも、トーヤが声を発する前に、パパの手がトーヤの頬にピシャリと音を立てました。

「お前は何をしているんだ! 学校に行ってないと聞いたぞ! パパもママも頑張っているんだ!シュウヤだって頑張っているんだ! お兄ちゃんのお前が頑張らないでどうするんだ!」

 パパの額には青いスジが見えます。とても怒っているようです。

 トーヤは何も言わずにパパを睨みつけると、そのままドアを閉め、中から鍵をかけてしまいました。パパが何度ドアを叩いても、トーヤがドアを開けることはありません。

 マルはそんな二人を、ハラハラしながら見ていました。

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