第3話
マルは、街を見守る天使です。何か問題が起きれば、それとなく人間にヒントを与え解決に導き、街を平和に保つことが仕事です。ですから、トーヤのことが気になりながらも、トーヤだけを見ているわけにはいきません。いろいろな問題を解決へと導きながら、時間を作っては、トーヤの家の前にあるヒイラギの木に登りました。
そうしてトーヤを見守って1週間ほどが経った頃、マルは気が付きました。
トーヤのパパは、朝1番の電車に乗るために、朝早くに家を出て行きます。帰りは1番遅い電車で帰ってくるので、トーヤと顔を合せることはありません。トーヤは一人で朝ごはんを食べ、学校に行って、帰宅すると近くのコンビニで晩ごはんを買って食べます。そして、誰もいない家で、一人で眠るのです。
そんなトーヤとパパが留守になるお昼頃に、時々ママが帰ってきます。ママもとても疲れた顔をしているのですが、ママは家に帰ってくると、溜まった洗濯物を片づけたり、洗い物をしたりして家を整え、夕方、トーヤが帰ってくる前にはまた出て行ってしまいます。
ママはどこに行っているのだろう?
ふと疑問に思ったマルは、ママの後をつけてみました。
そして、知ったのです。
ママは、マルが見守る街の中でも一番大きな病院で、トーヤの弟の看病をしていました。何の病気かはわかりませんが、トーヤの弟シュウヤは、一人だけの病室でいつも眠っていました。トーヤよりもずっと小さくて、小学校に上がっているかどうかわからないくらいの年のように見えます。
ママは一日中、シュウヤのそばにいました。シュウヤの頬を撫ぜ、声をかけ、本を読んであげることもありました。
ただ、ママの声が、シュウヤに聞こえているのかは、マルには分かりませんでした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます