キスで回復

 チサちゃんの柔らかい口唇が、ボクの口周りを這いずり回る。とてもチサちゃんらしからぬ行動だが、チサちゃんはしっかりと成熟した女性なんだと思わされた。


 子供扱いしていたのは、ボクの方だ。


 チサちゃんは、いつだってボクを受け入れるつもりだったのに。


 ボクに、度胸がなかった。


 だからチサちゃんは身をもって、ボクに密着してくれている。


 根性なしのボクに。


 嫌われたくない。大事にしたいと言っておきながら、本質は、度胸がなかっただけ。チサちゃんを壊してしまうのが、怖いんじゃない。ボクがチサちゃんの本気に恐れをなしていたんだ。


 自分の求めているチサちゃんと、かけ離れているから。


 理想を押し付け、ウブな子をチサちゃんに演じさせていたのは、ボクのせいだ。


「○ックスしないと出られない部屋」で、ボクはまざまざと心の弱さを思い知らされた。


 チサちゃんは、幼くてカワイイだけのマスコットじゃない。世界を包み込む、魔王なんだ。


 自分の度胸のなさと、ボクは受け入れなければならない。


「こんなのチサちゃんっぽくない」なんてワガママは、もう通じないんだ。

「チサちゃん。ありがとう」


 ボクも、チサちゃんの愛情に応える。


 ここまで、チサちゃんはボクを信じてくれていた。


 なら、ボクは逃げちゃいけない。


 目の前には、チサちゃんがオトナな眼差しを向けている。その視線は、ボクの口元にターゲットを絞っていた。


 ボクの方から、チサちゃんを迎え入れる。舌まで絡ませて。


「ダイキ、ダイキ」


 チサちゃんが、ボクの名前を呼ぶ。もっとねだるように、求めるように。


「よくできました。ごほうびあげますねー」

「な、なんでも、どうぞ」


 ロイリさんの忠告を無視して、ボクはチサちゃんの口唇を貪る。


 こんな関係に、なったって構わないんだ。恐れることはない。


 この子を、幼さのフィルターの中に閉じ込めるのは、もうヤメだ。




 そう感じたら、いつの間にかボクは小さくなっていた。





「あ、あれ?」



 マスクも、なくなってる。


「ダイキ、小さくなった。かわいい」

「え、キミは、チサちゃん!?」


 目の前に、チサちゃんの格好をした「大人の女性」がいる。服装も胸やお尻が突き出ていて、パッツンパッツンになっていた。


「オネショタ・ボーナスタイムでぇす。今のダイキさんは、精通寸前の時に戻っています。対するチサは、オトナの状態になってもらいました。これで触手を攻撃すると、一気に二つ倒せちゃいます。ただし、快感は精通時の状態ですっ」


 え、精通ってヤバ――。


「んんんんんんんんんっ!」



 精通、した……。

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