魔リカー バイク同士の対決

 愛車「ハチシャク」を呼ぶつもりが、白バイが召喚されるとは。ちゃんと車体に、「ルセランド警察」ってステッカーが貼ってあった。ルセランドは、チサちゃんの治めている都市の名前だ。


 よく見ると、チサちゃんの格好もミニスカポリスになっている。薄い黒タイツがまた生々しい。


「ヨアンの能力に合わせて、軽量・最適化したのかも」


 チサちゃんは、白バイとなったハチシャクをそう分析する。


 たしかに、ハチシャクってパトカーっぽかったもんね。


「アハハハ! 白バイとは恐れ入った! やっぱりダイキは、色々とやってくれる!」


 ヨアンさんが、豪快に笑う。


「でも、おあつらえ向きじゃないか。レディース対白バイなんてさ!」


 なんだか、ヨアンさんの闘争心に火が付いたようだ。


「じゃあ、こうしようじゃないか。私をとっ捕まえてみな! 私のバイクにタッチできたら、勝ちにしよう」


 ゴールは、最後の扉である。そこまでにボクらがヨアンさんたちにタッチできなかったら、ヨアンさんの勝ちだ。


「位置に付きな」


 ボクたちも、スタートラインにバイクを置く。


 レース場でよく見るシグナルが、床からせり上がってきた。青に点灯してスタートとなる。


 さっそく、ヨアンさんが豪快に飛ばす。


 置いてきぼりを食らったボクたちは、ヨアンさんの背中を追う。 


『そこのバイク、止まりなさい』


 無線機で、チサちゃんがヨアンさんに語りかける。


 当然、ヨアンさんは答えない。


『止まりなさい。止まらないと撃つ』


 言いたいだけだよね、チサちゃん?


 ククちゃんはGを全く意に介さないのか、自転車に乗るかのように横乗りしていた。ヨアンさんの腰にしがみつきながら。まるで河原で下校している男女だ。


「ククちゃん、危なくない?」

「正面からしがみつくと、当たってしまうのですわ」

「え、何が?」

「アレがですわ。今でも擦れて、膨らんでいますの」


 ククちゃんが何度も座り直して、腰をモジモジとさせる。


 ん? アレってまさか。



「わたくし、両性ですの」



 つまり、「付いている」ってワケだ。


「でも、ボクたちとオフロに入ったときは、どうしていたの?」


 とても、アレがある雰囲気じゃなかったが。


「擬態していましたの。ヴァンパイアですから、そういう芸当は可能ですのよ」

「じゃあ、ホントにアレが?」

「そうですの。だから、女性同士でも魔王になれますのよ。子どももなせますわよ」


 ならば、魔王候補として問題ないわけか。


「ヨアンお嬢様に、野心はございませんでした。ですが、ダイキさんの戦いぶりを見て、自分の考えを改めたのですわよ?」

「ボクが、ヨアンさんを変えた?」

「チサさんを正しい魔王へと導く、素晴らしい玉座だと」


 だから、負けたくないと。


「ダイキさんを越えなければ、立派な魔王になれないと」

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